■実際、現場に入ると、もうてんでダメ

 実際、現場に入ると、もうてんでダメ。出演が決まって3か月はレッスンを受けましたけど、しょせんはつけ焼き刃。まったくうまくできた感覚はありませんでした。でも、作品を作っていく中で、俳優や監督、スタッフが編み出すチームプレー感が面白くて。それまで、テニスという個人プレーしか体験したことがなかったから、すごく新鮮で面白く見えたんです。

 そして今に至るわけですが、僕にとっての芝居の理想形は“芝居をしていないように見せる”こと。そもそも、芝居に正解なんてなくて、自分のやり方にこだわっても良いことは一つもないと思っています。やっぱり、何の気負いもせずやっている自分を、俯瞰して見ているもう一人の自分がいるーーという感じにならないとダメ。スポーツで言うところの“ゾーン”と同じことだと思うけど、そういう状態はそうそう訪れなくて、難しいですね。

 一方で、長く活動をしていると、自分の年齢やキャラが、仕事の幅を狭めているな、と感じた時期もあって、僕にとってはそれが30代。20代の頃は恋愛ドラマの主役とかをさせていただいていましたけど、30代になると、会社の上司や父親を演じるには、年齢的に中途半端なんです。

 以前、松方弘樹さんに「男は40歳を過ぎてから」と言われたことがあったんですけど、そういう意味では、40歳を過ぎてからがちょうど良いって言うか、幅が広がった感じがしましたね。

 俳優という職業は定年がありません。だから、これからもいただいた仕事に向き合って、監督からの指示を凌駕するパフォーマンスを全力で出していきたい。昔、街中で「いつも見ているわよ。あなたが出ている作品は面白いものね」って言われたことがあって、やっぱり、チームプレーで、みんなの思いがひとつになってできた作品が喜ばれるのは、本当にうれしいんです。今後も、そう言ってもらえるように頑張っていきたいですね。

石黒賢(いしぐろ・けん)
1966年1月31日、東京都生まれ。1983年、ドラマ『青が散る』(TBS系)で俳優デビュー。以降、『振り返れば奴がいる』『ショムニ』シリーズ(ともにフジテレビ系)などのドラマや『竜とそばかすの姫』『マスカレード・ナイト』『20歳のソウル』などの映画に出演。俳優業のかたわら、絵本などの児童文学の翻訳家やウインブルドンテニスの番組ナビゲーターを務めるなど幅広く活躍している。

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