■大事なのはやっぱり人間関係
すべての仕事がそうだと思うんですけど、大事なのはやっぱり人間関係。それを大事にしてきたから50年以上も続けられたと思います。
撮影現場でカメラの横にいようもんなら「邪魔だよ」って怒られちゃう。でも、そう言われても、何とかやんなきゃ僕の仕事は成り立たない。そのためにコミュニケーションが大事になってくるんです。
そういう関係の下で、良い写真が撮れると本当に最高です。その手応えは、何物にも代えられませんね。
そんな僕の仕事の集大成として、『HERO 大島康嗣の仕事』という写真集を作りました。これまでに撮った188作品の中から、1087点を厳選しています。もともと『テレビマガジン』という子ども向け雑誌のためにヒーローを撮っていましたから、使われるのはやっぱり、子どもから見てカッコイイ写真です。でも、大人の目線から見たら、一枚の作品として素晴らしいという写真も数多くある。今回の写真集は、そういったものを中心に収録しています。
僕は今80歳です。健康第一だとつくづく感じますけど、実はこれまで“もうヤバイかもな”って思ったことが何度かありました。
59歳のときには脳梗塞を患いました。何度か入退院を繰り返した後にようやく復帰したんですが、シャッターを押そうとすると、どうしてもタイミングがズレちゃうんですよ。だから、カメラ屋さんに頼んで、シャッターの部分を改良してもらって、そのときの自分でも撮れるように調整してもらいましたね。
そうやって、現役をずっと続けてきましたが、2年前に一線を離れました。今は正直、カメラはもう持ちたくないです(笑)。若い頃より筋力が落ちてきたし、フットワークも悪くなったし。でも、仕事を辞めてみると、ただ食って寝てるだけの生き物になった気がして、むなしく感じることもあります。
だから、このあいだも40〜50代のカメラマンに言ってやったんですよ。“いずれカメラ持てなくなる日が来るんだから、今のうちに一生懸命やっておきなさいよ”ってね(笑)。
大島康嗣(おおしま・やすじ)
1942年、埼玉県生まれ。1964年、講談社写真部カメラマンとなり、『週刊少年マガジン』グラビア担当となる。『ウルトラマン』や『仮面ライダー』など特撮作品の写真を数多く撮影。1971年からは『テレビマガジン』などの児童誌を中心に活躍し、2020年の『仮面ライダーゼロワン』まで55年間に渡ってスチール写真を撮り続けた。
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