クリス・ハート(撮影・弦巻勝)
クリス・ハート(撮影・弦巻勝)

 僕が最初に日本に魅了されたのは、アメリカの中学校で日本語クラスに参加したときでした。13歳のとき、2週間のホームステイを経験して、その思いは決定的になりました。

 景色、文化、食べ物、人の優しさ、何もかもが素晴らしい。アメリカに戻ってからも、日本に住みたい、ここで暮らさないと自分らしくいられない、ついには「日本に帰りたい」と思うようになっていました。

 アメリカでは、ひたすら日本の歌を聴き、歌詞カードの日本語で勉強。高校時代はバンドを組んで、日本人アーティストの曲を演奏していました。でもそのときは、歌手になるというイメージはなかったんです。心にあるのは、ただただ「日本に住みたい」ということだけでした。

 アメリカで10年間、日本語を使う仕事をしたらビザが取れる、というので、国際空港や、日本の化粧品ブランドのコールセンターなどで働き、09年にやっと願いがかないました。

 日本に来て、働きながら音楽活動をしていたところ、外国人が日本の歌を歌う番組『のどじまんTHEワールド!』(日本テレビ系)にお声がけいただいたんです。その結果、なんと優勝! ソロシンガーとしてデビューすることになり、僕のプロシンガー人生が始まりました。

 デビューから数年は、日本人が日本語で作った曲をカバーすることが多かったです。その中で、日本の歌は、やっぱり、日本に住んでいないと完璧には歌えないんだな、と痛感しました。それは、言葉のひとつひとつに、深い意味や背景があるから。

 たとえば「春」という言葉には、「卒業」とか「旅立ち」といった意味合いが含まれているんですね。そのことに気づいてから、歌うことがますます楽しくなりました。

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