■アルカイダやイージス艦機密漏洩事件でも
00年代で注目されるのは、02〜03年にアルカイダ幹部が頻繁に日本に入国し、新潟を拠点に活動していた一件だという。
「最初は米国が、捕虜にしたアルカイダ兵から潜伏情報をキャッチし、CIAはそれを別班関係者に伝え、洗わせたと言います」(前同)
また、07年のイージス艦機密漏洩事件でも、別班は状況を把握していたという。
「防衛情報が相次いで中国に流れたことで、自衛官が中国人女性に取り込まれている危険性について、別班関係者には事前に伝えられていたようです。ただ、中国人女性と交際する自衛隊員や防衛産業関係者が多すぎて把握しきれないと、はなから調査を諦めてしまった。そんな背景に、班員の人手不足もあります」(自衛隊別班関係者)
ドラマと現実では実態に大きな隔たりがあるという。
「別班員の処遇と評価は低く、諜報活動だけでは出世は難しい。ゆえに、士気も上がりません。創設当初は外国での活動を指向していましたが、現在は国内での諜報活動がメイン。特に、2010年代に入り、中国で日本人が相次いで拘束されると、情報収集を要請していた協力者を切ったうえ、別班の班員が中国入りするのもやめたといいます」(前出の井野氏)
さらに、収集された情報が闇に葬られるケースも。
「情報分析能力のない人物が、派閥の論理だけで主要ポストに就くケースが日本では多すぎて、班員からの情報が無駄になっているんです」(前同)
別班に代表される国家としての情報収集力の弱体化は、日本の安全保障を脅かす事態も招いているという。
「ロシアのウクライナ侵攻も、アメリカは日本に、“侵攻あり”と何度も警告していたのに、政府は侵攻はないと判断した。同時期、別班や在モスクワ日本大使館からも侵攻間近との情報はもたらされず、ウクライナ在住の日本人に退去勧告は行われませんでした」(前出の別班関係者)
ドラマを機に、別班の強化を願いたいものだが……。