この4月に連載が終了した『ラストイニング』(小学館)は、ツクイ氏が「リアルさでいえばナンバーワン」と話すように、現実志向の高校野球マンガ。



監督目線なのが最大の特徴だ。監督・鳩ケ谷圭輔が選手たちに言った「8勝92敗でも甲子園に行ける」というセリフは、野球マンガ史に残る名言だ。
「選手のキャラクターが弱いんです。それも現実にいそうな子を描いているから。高校生の伸びしろの見せ方がうまいんですよ。たとえば、予選ではショートバウンドでファーストに投げていた内野の選手が、甲子園ではちゃんとノーバンで投げていたり。大人向けの作品です」(ツクイ氏)

大人が読んで楽しめるマンガといえば、『グラゼニ』(講談社)も外せない。



中継ぎ投手( 凡田夏之介)が主人公と、一見地味だなのが、このマンガのスゴいところは、「プロ野球選手がユニフォームを脱いだところ」に焦点を当てていることだ。どんなオフを過ごしているのか、契約更改の内情など、これまでの野球マンガとは一線を画す内容になっている。
「そこは今まで触れられてこなかった、いわばタブー。ヤンキーマンガなのに、家で母親と話すシーンを描くようなもの(笑)。ただ、それをいやらしく描いてなくて、選手愛を感じますよね。カネが絡んでも嫌な気分にならないのが、非常にいい。凡田の高校生編なんて、それだけで一冊作れそうなくらい、面白いですからね」(ツクイ氏)

現在、凡田はメジャーに挑戦中。今後の展開が気になるところだ。

『グラゼニ』がニッチ路線なら、「今の高校野球マンガの王道を走っている」(サービス業= 30代)というのが、『ダイヤのA』(講談社)。



私立の強豪校に入学するも、エースにはなれない投手が主人公(沢村栄純)。それでも、変則フォームで成長と活躍を見せ、次第にチームメイトからも認められていく――。
「強豪校の選手がマジメに練習をする。それは現実でも当然のことで、とても説得力がありますよね。補欠メンバーの気持ちも表していたりして、単純に面白いですよ。今後の野球マンガは、これがベースになっていくんじゃないですかね(」ツクイ氏)

夏の地方予選では、決勝で敗退するなど、簡単には甲子園に行かせないあたりも評価したい。

最後は、同じく高校野球マンガの『おおきく振りかぶって』(講談社)がベスト入9り。



気弱な投手である主人公の三橋廉が、相手を倒すことより、捕手心理やチームメイトのことを心配するというあたり、時代の流れを感じるところだ。
「男女が逆転しているんです。女性監督が一番男っぽくて、選手たちは女っぽい。女性が強い現代を表しているのかもしれません。あと、このマンガはPTA目線なんですよ。観客席から野球を見ているんですよ。父母会のやり取りなんかは、ある意味、すごくリアルに高校野球を描いていますよね」(ツクイ氏)

グラウンド外の心理描写に主眼が置かれる一方、試合は淡々と進んでいくギャップが面白い。野球をしたことがない人や女性にもオススメだ。

今回挙げた以外にも、名作は腐るほどあり、紹介しきれないのが悔しい!
ぜひ、自分なりのベスト9を考えだてみてくさい!

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2