"愛のムチ"であろうと辞めさせる――首脳陣はそう通達されていたはずだが、聞こえてきたのは……

ペナントレースも、いよいよ佳境。セ・リーグは乱セが続き、首位争いはもちろん、CS出場権争いも熾烈を極めている。

その中で不気味な存在と言えるのが、3位の広島を4・5ゲーム差(8月20日現在)で追う中日。昨年こそ4位に終わったものの、それまで11年連続でAクラスを死守してきただけに、巻き返しを狙っている。

ところがベンチ裏では、そんなチームのムードを一変させる、ある事件が勃発していたというのだ。
「5月17日のことです。右肘痛で調整が続いていた浅尾拓也が、ウエスタン・リーグで実戦復帰登板を果たしたことで大きく報道されたこの日、実は、どこにも報道されていない事件が起きたんです」(スポーツ紙記者)

発端は、マツダスタジアムで行われた中日vs広島の二軍戦のことだった。

「中日が守備の際に、相手の一塁ランナーが盗塁したんです。そうした際には、試合に出ている選手だけではなく、ベンチにいる選手も"走ったぞ!"と声を出さないといけない。しかし、昨年の育成ドラフトで入団したルーキーの橋爪大佑内野手が、それを怠ってしまったというんです。これを見た佐伯貴弘二軍監督が、激怒して……」(球団関係者)

試合が終わると、佐伯監督は橋爪をベンチ裏に呼び出して、こう言った。

「佐伯監督の"何で走ったって言わねえんだ!"と怒鳴り声が響き渡りました。監督には、ベンチを含め、チーム一丸で戦いたいという思いがあるんです。続けて、"俺は今から、先輩として殴るからな!"という声が聞こえてきました」(前同)

佐伯監督と橋爪は、ともに大阪商業大学出身。それだけに常日頃から目をかけていたという。

そして、ついに――。
「橋爪の顔を思いっきり平手打ちしたというんです。しかも一発にとどまらず、何発も暴力を振るい、橋爪はダウン。病院に担ぎ込まれたんです」(同)

佐伯監督からしてみれば、"愛のムチ"なのか。

「佐伯監督は、熱い人。二軍でも時代に逆行したようなハードな練習をさせていますよ。横浜の選手時代には、あまり練習をしないタイプだったから、昔を知っている人は、"彼も変わったもんだ"と言っていますよ」(スポーツ紙デスク)

特に、お気に入りの選手に対しては、ひと際熱くなるという。
「一軍で活躍する高橋周平が、長嶋清幸打撃コーチと一緒にすり足打法を固めていたところ、佐伯監督が"足を上げろ!"と言ったことで、首脳陣から"一軍の選手に口を出すな"と注意されたことがあります。これも、佐伯監督が二軍で高橋を見てきたので、いても立ってもいられなくなったのでしょう」(中日担当記者)

今回の橋爪も、大学の後輩であるのと同時に、育成選手ということで、一人前にしようという思いから、スパルタになってしまった面もあるのだろうか。

「ただ、橋爪はなんと3週間も入院してしまったんです。この件は二軍の選手にも知らされず、"橋爪は、どこに行ったんだ?"と声が上がったほど。橋爪は退院したものの、真面目な性格のためか、ストレスを抱えてしまい、ユニフォームを見るだけで吐いてしまい、練習に行けなくなってしまったそうです。そのせいで、体重は10キロも減り、自慢の軽やかな守備もキレがなくなってしまっています」(前出・球団関係者)

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