プロ野球も終盤戦。セ・リーグの優勝争いは、巨人、阪神、広島の上位球団による三つ巴の熾烈なサバイバル戦に突入している。

当初、巨人の独走かと思われたペナントレースの展開が、混戦模様となったのは、巨人の攻守の要である阿部慎之助(36)の大不振にあることは、衆目の一致するところだ。

「今年の阿部の得点圏打率・273は巨人のレギュラー陣の中では、村田修一と並んで悪い数字(8月28日現在)。前半戦終了時点での成績を見ても打率・245、9本塁打、31打点は"6億円プレーヤー"としては、あまりにも物足りない数字と言えます」(全国紙運動部記者)

苦悩する阿部に、直接インタビューした巨人OBで野球評論家の橋本清氏は、主砲の不調ぶりを、こう解説する。

「阿部の不振の最大の原因は、首の痛みなんです。オープン戦で痛めた首が、なかなか治らず、それがずっと尾を引いていますね」

首のケガは打撃に影を落としただけではない。むしろ守備に甚大な影響を与えている。

「今シーズン、巨人のバッテリーエラーは38個と異常に多い。首をかばってか、ワンバウンドした球を身体で止めようとはせず、手だけで取りにいくケースも増えている。朝、ベッドから起き上がれず自分の髪の毛をつかんで、体を起こしたこともあったというほどの重症だそうだ」(スポーツ紙デスク)

原辰徳監督も、こうした現状に頭を痛め、阿部の打順を6番、7番あるいは、8番まで下げたり、守備の負担を減らすべく、一塁を守らせるなど、さまざまな打開策を講じてきた。

この一塁起用で、いよいよ"キャッチャー卒業"の時期が来たのではないか、と憶測を呼んでいる。

「阿部にとってキャッチャーは愛着のある、かけがえのないポジション。このままでは、ドラ1ルーキーの小林誠司に正捕手の座を奪われるかもしれないということで、本人もかなり焦りを感じているのでは」(スポーツ紙記者)

しかし、前出の橋本氏によれば、意外にも阿部は明るい表情で、自らの置かれた立場を受け入れ、次のように答えたという。

「チームのこと、自分のことを考えれば、僕が一塁をやることは、大事なことだと理解しています。肉体的な負担は一塁のほうが少ない。チームのことで言えば、将来のために小林に経験を積ませたいのはわかるし、僕もそうしてもらいたいと思っています」

橋本氏の「このまま正捕手を外れて、ずっと一塁をやることになったら、どうするか」というシビアな質問に対して、「キャッチャーができなくなったわけでも、やりたくないわけではありませんが、全然、受け入れます。実際に、そういうこともあると 思っています」と即答。

キャッチャーへのこだわりを捨ててしまったというわけではないが、どんな結論が出ようと「首脳陣の判断」に従う覚悟はできているようだ。

そして、キャッチャー以上にこだわっているのが、一日でも長くプレーすることだという。

「春季キャンプで臨時コーチを務めた松井秀喜氏に、"とにかく、できるだけ長く現役をやれよ"とアドバイスを受けたんだ。阿部にはあと10年、45歳まで現役を続けたいという野望があるらしいよ」(ベテラン記者)

そのためには、近い将来の一塁コンバートも十分、視野に入れているという。

「甲子園出場経験もある阿部の実父は、"あと2年は捕手、その後、一塁に変えてもらって、40歳までプレーできれば上々"と考えているみたいだね」(前同)

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