隣の部屋の客が「出た」と大騒ぎ!
そのうち、隣の部屋の客が戻ってきました。話し声から考えて、2人います。下からホテルの従業員でも連れてきたのでしょう。何かを説明しています。
「出た」「突然明かりも何もかもが消えて」「白い」
途中途中が何故か消されたように聞こえません。
耳を澄ますのですが、どうしても聞き取れない。さっきまで壁越しに筒抜けだったのにも拘わらず。
従業員らしき人は何事かを答え、そのままどこかへ電話を入れました。そして、2人でまた出て行ったのです。
さすがに私も眠れません。また何かが出てきたら……そう考えると眠気が来ないのです。
部屋を明るくして、テレビをつけ、朝までじっと身構えていました。結局、あれから何か出ることも、隣に誰かが帰ってくることもありませんでした。
そのまま早朝にチェックアウトしましたが、少し気になることがありました。
隣……そう煩かったあの部屋のドアに何か立て掛けられているんです。
掃除中のプレートならドアノブでしょうが、それとは全く違う。
少し厚めの黒いボードで、大きさはだいたい週刊誌くらいでしようか。
艶消しの表面には何もありまん。ふと思い付いて、そっと裏返してみたんです。
そこには、白いペンキで何かが書かれていました。が、意味が分からない内容でした。
まるで地図記号のような……、丸と線が合わさったようなものでしたから。
それから何度かこのホテルに泊まりましたが、同じようなことは一度もありません。
だから、あの板の正体も不明です。
『本当に体験した! 恐怖の心霊報告書』¥700(税抜)双葉社