――痴漢ものなのに?

温水 いや、あれは悲しいお話なんですよ!! そりゃあ痴漢はダメですよ? 痴漢はダメなんですけど、やめたくてもやめられない痴漢集団の悲しい性といいますか……。

――ごめんなさい、拝見していますので本当は知ってます(笑)。痴漢ものだけど男も女も切ないし、心温まるし、素晴らしい作品ですよね。温水さんが男主役となる『痴漢日記4』なんて号泣しましたよ。

温水 うわ~、ありがとうございます! そうなんですよねぇ~。だいたいどの作品も中盤までは、螢雪次朗さんとか大森嘉之君とか痴漢仲間が、居酒屋で焼き鳥をつまみながら「今日は○○線の何両目にいい女がいてさ」みたいな話とか、痴漢の美学みたいな話をマジメに語り合ったりしているんですけど (笑)、最後はその回の主役の女の子のためにみんなで一肌脱ぐ。それでも恋は実らず去っていくという……。僕の回も、相手役の清水ひとみさんが演じた真帆も、何とも言えない切なさを背負った女性で、彼女のためにガム男と仲間が奔走する。ハートウォーミングないいお話でしたね~。

――シリーズ撮影中に、印象に残っていることはありますか?

温水 人情味あふれる人たちのお話だったし、共演した方々とも和気あいあいとして撮影は本当に楽しかったんですけど、体力的にはハードでした。だから、やっぱり大変だったな~ということが一番に思い浮かびますね。
なにが大変かって、撮影期間が一週間くらいしかなかったから睡眠時間が全然とれなかったんですよ。それがツラかったのと、もう一つは、ゲリラでいろんなところに行って撮影するから、街の騒音とか救急車のサイレンが鳴り止むのを待っている時間がなくて、オールアフレコ(撮影中に音声は録らず、映像に合わせて後でセリフを録音すること)だったんですよ。『あれ? マイク持ってる人がいない……』って気づいたときは衝撃でしたね(笑)。
一応、ちっちゃなマイクロレシーバーでセリフを録ってはいるんですけど、結構アドリブでしゃべることも多かったし、それを記録してくれる人もいないから、自分で台本にメモしたりして。後日、東映のアフレコルームで3日くらいかけてオールアフレコしたんですけど、僕、全部アフレコでやるのは初めての経験だったから、リップを合わせたりするのがすごく大変でした。

――ゲリラ撮影は、たとえばどういうところへ?

温水 う~ん……これは時効だと思うので言いますけど、許可なしで埼京線に乗って撮影したりしてました(笑)。

――えー! 本当に痴漢が多くて有名な電車ですよね!?

温水 カメラを風呂敷で包んで隠して(笑)。エキストラをたくさん入れて、一般のお客さんの中に紛れて撮影をしたりしていましたね。

――普通に乗り合わせたお客さんが見て勘違いして「キャー、痴漢よ!」とか騒がれることはなかったんですか?

温水 あ、実際に手がアップになって触っているようなシーンは緑山のスタジオの中にセットを作りまして、そこで撮っていたから大丈夫です(笑)。

――なんだ、失礼しました。でもその触るシーンも結構、過激でしたよね?

温水 そうなんですよ。もちろん触られる方も皆さん、演じているわけですけど、なんか僕も触りながら「あれ? この人、本当に嫌がってるんじゃないかな。大丈夫?」と思うこともありました……というか、シリーズ一作目は普通のプロダクションの女優さんがいらっしゃったんですが、本当に嫌がってましたね(笑)。
富岡監督は、僕にだけコッソリ「リハーサルはスカートの上から軽いタッチでいいけど、本番はスカートをまくりあげてパンツの上からアソコの部分も触って」って言うんですよ。「え!! 本当にやるんですか?」みたいな(笑)。
何度も確認したんですけど「リアルさを追求したいからやってくれ」と言われれば、僕ら役者は監督のいう通りにやらないといけないですからね。それで本番になって本当に触ったら、相手の女優さんはすごく嫌がった。言葉にはしないけど、目が「え、ここまでするって聞いてないよ!? スカートの上からじゃないの?」と非難している感じで……。僕の手をはじいて身をよじって、結果、確かにすごくリアルな痴漢の映像が撮れていました。でも『2』からは、触ってもOKなグラビアの女性が呼ばれていましたけど(笑)。

  1. 1
  2. 2
  3. 3