場所中も朝まで飲んだ北の湖

そんな輪島の好敵手だったのが北の湖。
「輪島-北の湖戦は"昭和の黄金カード"でした。優勝を賭けて、横綱同士が千秋楽で対決するという相撲の醍醐味を、2人に味わわせてもらいました」(前出・ベテラン相撲記者)
北の湖は輪島の引退後、向かうところ敵なしとなり、憎いほど強いといわれた。
また、その強さは"夜の世界"でも発揮された。
「全盛期の北の湖さんと一晩、飲み明かしたことがありますが、とにかく強い。場所中、その日の取り組みが終わって午後7時頃から飲み始め、ビールと焼酎、それからブランデーのボトルを大きなアイスペール(氷入れ)になみなみと注ぎ、皆で回し飲みです。しかも、深夜の2時半過ぎになって北の湖さんが腹が減ってきたというので、それから焼肉ですよ」(大野氏)
だが、相撲はきっちり。
「明け方近くまで飲み食いした後、北の湖さんは午前7時からの朝稽古にちゃんと出るんです。場所中、そんな生活をしながら優勝までしてますからね」(前同)
まさにレジェンドと言える力士だった。

一方、幕内優勝回数の伝説を作りつつある男・白鵬も、飲みっぷりでは北の湖に負けていない。彼の飲み友達で、お笑いコンビ・カラテカの入江慎也氏は、
「自分も飲むし、周りにも飲ませるタイプ。ワインクーラーよりもひと回り大きい入れ物に、瓶ビール5本とウイスキーボトル1本、ソーダとシークワーサーの原液を混ぜたスペシャルドリンクを作り、皆に振る舞う。白鵬関も、それをガンガン飲むんですよ」
ちなみに入江氏は遠藤とも飲んだことがあると言う。
「白鵬関の後輩の後輩なので一度だけね。居酒屋チェーンの『和民』で(笑)。そのときはおとなしくて静かに飲んでいる感じでした」

レジェンドといえば、73年ぶりに40代での勝ち越し力士となった旭天鵬(前頭11=友綱部屋)も忘れてはならない。
「初のモンゴル出身力士で、モンゴル勢にとっては"相撲界の野茂"的存在。モンゴル出身力士から"兄さん、兄さん"と慕われています。夏に、他の力士数人と海でビーチバレーをしたことがあるんですが、あんな巨体なのに、動きが機敏で体がすごく柔らかいんです。ちなみに力士たちは皆、海パン一丁。旭天鵬関をはじめ、海から出てくる姿がトドに見えました(笑)」(前同)

ここで再び、番付表に目をやると、強いだけではなく、個性的な力士に票が集まっていることがわかる。
残念ながら、今場所4日目から休場となったものの、
「エジプト出身の大砂嵐(前頭5=大嶽部屋)が今年の名古屋場所、得意のカチ上げで稀勢の里の顔面を腫れ上がらせた一番はスゴかった」(49=製造メーカー勤務)
ほかには、こんな声も。
「勢(いきおい)(小結=伊勢ノ海部屋)が先場所、連勝中の逸ノ城と対戦して勝利した取組は、途中流血のため、行司が異例の"待った"をかける大熱戦で興奮しました」(38=公務員)
個性的な技といえば、やはり上位にランクされた舞の海(元小結)。
小兵の舞の海が長身の横綱・曙(当時は前頭筆頭)を破った一戦は、身長差30センチ、体重差103キロと言われた。決まり手は三所攻め。三か所を同時に攻めるという"D難度"の技だ。

また、横綱・若乃花は初代、三代目とも、技のキレ味で相撲ファンを魅了した。
「小兵ながら、仏壇返しと呼ばれる荒技をやってのける力強さがあったのは初代。三代目は、左右のおっつけから前へ出ていく技が見事でしたね」(前出・ベテラン相撲記者)

高見盛(元小結)は不思議な力士として記憶に残っている。「稽古場では幕下力士にも勝てないのに、土俵に上がってパフォーマンスを始めるとギアが入るらしく、本番に強かった」(前同)

朝青龍も本番に強い横綱だった。
「持ち前の闘争心に火がつき、とにかく強かった」(若手相撲記者)

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