マスコミ幹部と「食事会」で…

これについて、各局は、「日頃から、多くの団体や個人から、さまざまなご意見やご要望をいただいており、個別の件について、お答えはしていません」(NHK広報局)
「申し入れは、受けております。これまでも選挙に際しては、各政党から公平中立な報道を求める申し入れを受けたことはあり、今回もその一環と受け止めています」(TBS広報部)
「文書を受け取りましたが、従来から放送法や公職選挙法に基づいて公平公正な選挙報道を心がけております」(テレビ朝日広報部)
「常に不偏不党、公平中立な報道を行っており、今後ともその方針は変わりません」(フジテレビ広報部)
「ニュース報道全般について、従来から公平公正かつ不偏不党であることに留意しており、今後もその方針に変わりありません」(日本テレビ広報・IR部)
と"毅然たる報道"を行っているとする。信じたいが、現実はどうだったか……。

また、安倍首相は圧力だけではなく懐柔策も駆使。
その一つがマスコミ幹部との「食事会」だ。マスメディアの動向に詳しい五十嵐仁・元法政大教授が言う。
「重要な政策や外交問題があるときに、必ず会合や食事会をしています。メディア側も、首相自ら出向いてきたら筆先も鈍りますよ。こうした癒着的関係で国民の知る権利は守られるのか、疑問は拭えません」

具体例を挙げると――。
13年12月26日、首相就任後、靖国神社を訪問した当日、東京・赤坂の高級日本料理店。14年4月1日、消費増税施行日当日に東京・四谷の居酒屋、翌日は赤坂の日本料理店。14年5月15日、集団的自衛権の行使容認を公式に表明した当日、東京・西新橋の高級すし店。さらに、総選挙投開票で大勝判明の2日後の14年12月16日、同じ西新橋の高級すし店……。

「おそらく、食事会では報道の指針などが密かに決められたと思います。実際、これら食事会以降、メディアの政権批判は極端に少なくなっています」(前出・ベテラン政治記者)

ちなみに、昨年、安倍首相の弟・岸信夫外務副大臣の次男がフジテレビに入社。このフジテレビの日枝久会長と安倍首相は、ゴルフや会食を重ねる親密な仲だ。
「常に不偏不党、公正中立」(フジテレビ広報部)に疑いが出なければよいが……。

歴代政権をつぶさに見てきた政治評論家の浅川博忠氏が言う。
「古今東西、庶民は権威や権力者を笑いの対象にすることで、その愚かしさや間違いを浮き彫りにしてきました。なのに今、一人天下を謳歌する安倍首相は、動向をチェックするマスコミを骨抜きに。これは健全な民主主義とはほど遠く、愚かというしかありません」

パリでは各国首脳が自由を標榜し、デモに参加した。翻って、日本。これが安倍首相が目指す"美しい国"なのか――。

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