しかし、確かな手応えと未知への可能性を感じた僕は、迷わず、橋田満先生にこう進言していました。
「次は距離1400メートルの阪急杯を使いませんか?」
「それって!?」
「ここでいいレースができれば、高松宮記念でも勝負になると思うんです」
時間にしてわずか2秒か3秒。橋田先生も、「おもしろそうだね」とニヤリと笑みを浮かべていました。その「阪急杯」は僅差の3着。さあ、そしていよいよ本番、「高松宮記念」です。初めての1200メートル。未体験の重馬場……まるで不安がなかったと言えば嘘になりますが、迷いはありませんでした。
道中は中団やや後ろ。それまでの戦法……後方一気ではなく、3コーナー手前から馬群の外を進出。直線入り口で先行集団を捉えると、最後は僕の想像を超える力強さで、栄光のゴール板を駆け抜けていました。
今年、この「高松宮記念」で僕のパートナーを務めてくれるのは、コパノリチャードです。
前走「阪急杯」は、最後の直線で脚が止まり6着に敗れましたが、本番に向けて、体調もアップしているようです。狙うはもちろん、90年のバンブーメモリー、05年のアドマイヤマックス、07年のスズカフェニックスに続く4度目のV。チャンスは必ずあるはずです。
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