パの右、セの左の大砲ならばかつては番長、ゴジラだった。そんな二人を霞ませてしまう"本物"たちがシノギを削る!

今、二人の和製大砲が球界を揺るがしている。
あの松井秀喜や清原和博が現役バリバリで活躍していた頃に比べると「小粒になった」と言われていた日本球界だが、野球評論家の金村義明氏は、こう言う。
「あの二人がいますよ!」
二人とは日本ハムの中田翔(25)とDeNAの筒香嘉智(つつごうよしとも)(23)。
実際、セ・パを代表する二門の若き大砲がペナントレースを大いに盛り上げているのだ。

まずは、日本代表でも4番に座ると目される中田。
本塁打6本で、パ・リーグ断トツのトップ(数字は4月15日時点=以下同)。打点も15でパの2位。長打率は.545、得点圏打率も.375。現"日本の4番"の面目躍如たる活躍だ。
日本ハムが、開幕前の評論家諸氏の予想を大きく覆して首位を独走しているのも、この中田の働きがあればこそ、と言える。

高校通算87本塁打、甲子園でも歴代7位となる4本のホームランをかっとばして「平成の怪物」と呼ばれた中田。07年10月のドラフトで日本ハムに指名されたときは、「未来の大砲」と騒がれ、パ・リーグの右の大砲の代名詞、清原和博に擬せられたが、ここに来るまでは紆余曲折があった。
「素質は誰もが認めるんですが、ムラっ気があるんです。打撃フォームも安定せず、毎年、フォームをいじっていました。そのためか、シーズンを通しての安定した活躍が少なかったんです」(スポーツ紙デスク)

極端にスタンスを広げるノーステップのガニ股打法など、さまざまな打ち方を試したが、ノーステップをやめ、足を上げてタイミングを取る打法に切り替えた頃から、成績が安定してきた。
昨シーズンは100打点を記録し、プロ入り以来初めてのタイトル奪取に成功したが、このシーズンオフには、さらなる飛躍を求めて肉体改造に着手、なんと14キロもの減量に成功したという。中田自身が、自分で「体のキレがよくなった」ことを感じるレベルにまで絞り込んだのだ。
「今シーズンの中田のスイングは素晴らしい。ジャストミートした球がスタンドに入るのは当然ですが、こすっただけでスタンドに入ってしまうのだがら、驚異です」(前出のデスク)

4月6日の対オリックス戦。中田は山﨑福也から満塁ホームランをかっとばしてヒーローとなったが、打ったあとには、首をひねりながら走る中田の姿が見られた。明らかに「打ち損じ」とも思える、こすった打球、それが、あの広い札幌ドームのレフトスタンドに飛び込むのだから恐れ入る。
打たれた山﨑が、
「プロの凄さを一番感じさせられた一打でした」
と唖然としていたほど。
前出の金村氏は中田の好調の理由を、バッティンフォームが安定したから、と分析する。
「タイミングを取るのに苦労してきましたが、今年はフォームが安定し、自分のタイミングで打てるようになってきたんです」

さらに金村氏は、もうひとつ、今季の中田が覚醒した大きな理由があるという。
「やはり、昨年いっぱいでチームリーダーだった稲葉篤紀選手が引退してしまったことが大きいと思います。今までは引っ張ってもらう存在だった中田ですが、これからはチームの中心選手として、みんなを引っ張っていかなければなりません。こうした"自覚"が生まれ、彼を目覚めさせたのだと思います」

中田のヤンチャなキャラクターは、かつての番長・清原和博と比較されることが多い。「パ・リーグを代表する右のスラッガー」という面でも共通している。
「清原超えは、素質からすれば十分ある話。好不調の波はあるかもしれませんが、このままいけば、今年は本塁打王のタイトルを取るかもしれませんよ」
と、前出の金村氏は期待を寄せる。

一方の筒香もすごい。
彼の所属するDeNAも日ハムと同じく、シーズン前の予想を覆して、開幕ダッシュに成功。8年ぶりの単独首位に立つなどペナントレースを牽引している。
この原動力となっているのが、中畑監督の肝煎りで今年からキャプテンに指名された筒香だ。
打率.322、本塁打3本(日本人トップ)、出塁率は.431、長打率に至っては驚異の.542。

金村氏は彼をこう評する。
「これまでは、タイミングの取り方に迷いがあり、時折、頭から突っ込むような打ち方をしていました。ところが今年は、ちゃんと上体が残るような打ち方になって、飛距離が伸びた。それに、広角に打てる技術も持っている。もともとスイングスピードの早さには定評があったので、タイミングさえ合えば、どんどん長打を量産できるはず。やはり、彼もタイトル争いの最有力候補ですよ」

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