映画『ザ・トライブ』より。
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続いては『ザ・トライブ』。
台詞や音楽は一切なく、字幕も吹き替えも存在しない。なぜならすべての登場人物が聾唖者だからだ。
なので、観客は何が語られ、何がおこなわれているのか、すべて彼らの一挙手一投足をみながら想像しなければならない。すべて言葉で説明してくれる『ビリギャル』と見比べてほしい。想像力が問われる。
途中、主人公の青年が、売春にはげむ女子に恋心を抱くシーンがある。「お金」を払って情交を重ねるが、青年にとっては片思いなのだ(そのシーンはこの映画のポスターになっている)。
あれ、このシーンどこかで見たぞと思った。そうだ思い出した。1986年2月におこなわれた「アントニオ猪木VS藤原喜明」なのである。藤原が猪木にアキレス腱固めをさっそうと極めるのだが、猪木は「極めるポイントが違う」と藤原に指を差した伝説のシーン。
藤原にとっては屈辱の瞬間である。UWFで自分は大きくなって帰ってきて、今こうして猪木とメインイベントで試合をしている。しかし猪木はまだ自分を「弟子」としてしか扱っていない。そういう態度を観客にアピールしている。藤原の「片思い」が切ないシーンだったのだ。
猪木の非情さもあらためて教えてくれた『ザ・トライブ』という映画。
今年は「プロレス映画」の当たり年である。
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