バレット見習いで学んだ大切なこと

制度が認められ、僕が初めてバレットと契約した当初は、懐疑的な目で見ていたほかのジョッキーたちも、次々に導入。

最初はみんな手探りでしたが、時間の経過とともに関係が密になり、かゆいところに手が届くというか、単に騎手のサポートをしてくれる人ではなく、最も身近にいるチームの一員としてなくてはならない存在になってきました。

――ん!? あれっ?
ここまで書いて思い出したことがあります。

あれはまだ僕が、"あんちゃん"と呼ばれている頃のことです。河内騎手の馬具の手入れも僕の仕事のひとつ。今で言うバレットの見習いのようなものですが、指示される通りに用意していくと、「前にあの馬に乗ったときも、この鞍を使っていたな」とか、「この馬のときはいつもアブミが短い……」とか、気づかされたことが多々ありました。

言葉であれこれ言うのが苦手だった河内さんは、ひとつひとつ、日常の作業を通して、僕自身に考える環境を作ってくれていたのかもしれません。きっと、いや、絶対にそうです。

調教でも、騎乗でも、道具でも、自分の頭で考え、いいと思ったことは遠慮せずにどんどん盗め。河内さんが背中で教えてくれたことは、今も武豊の根っこであり、とても大切な財産です。

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