赤いベルトがなくなって自由になれた

――たしかにそこからは王者としての風格が出てきました。

イオ 防衛回数ごとに自信がつきました。V10の里村明衣子戦(2014年7月)では、爆発した~! って感じです。あの時は自信しかなかったです(笑)

――個人の見方ですが、その後ベルトを落としても印象はそのままというか。

イオ そうなんですよ。おもしろいことにベルトが無くなって、チャンピオンって立場じゃなくなったらガクッと落ちていくのかと思ってた。だけどじつは逆で、ベルトを獲られた自分は一皮向けたんだって思えたんです。自由になったんですね。

――紫雷イオという選手が単にベルトを外しただけです、みたいな身軽な感じなんですよね。

イオ ベルトは団体の最高峰で、巻いている人が団体の顔。チャンピオンベルトって、そういうものじゃないですか。ベルトに価値が無かったら、何の意味も無いし、それこそ団体力が問われてしまう。でも私は、それをまっとうして、「チャンピオンとはこうあるべき!」というものを作り上げていたし、追い求めてた。でも、無くなったら無くなったで、今度は紫雷イオのやりたいプロレスを好きなようにやれるようになったんですよ。背負うものがようやく取れたというか、自由になった分、すっごく楽しいんですよ!

――イオ選手にとっての「ベルト=高橋選手」という強烈なイメージがあったように、いまのファンには「赤いベルト=紫雷イオ」というイメージが出来上がったと思うんです。たとえ、いまは巻いてなくても、いつでも巻き返すだろう、という。

イオ おぉ~、そう言っていただけるのは、すごく嬉しいですね! それだけ自分が防衛してきた印象が残っているということですから。積み上がっていたということですもんね!

――それこそ、11回目の防衛戦で世IV虎選手に敗れたことが意外なほどでした。それほど、王者として完成したということだと思うんですけど。

イオ 確かにベルトは奪われました。だけど、積み上げたものが崩れたわけではないんですよね。それはやっぱり、ベルトを巻いている期間につけた“自信”が、ベルトにくっついてたわけじゃなくて、ちゃんと私の身体そのものに巻きついたってことなんだと思います。ベルトが無くなったいまは、その自信を自由に爆発させられるようになったって感じなのかな。いや~、ここまで褒められるようになるとは(笑)。だって私、クソみたいなレスラーだったじゃないですか? いや、レスラー以前の問題だったじゃないですか? それが、ここまで褒められるようになるとは!

――いやいや!

イオ でも、プロレスのファンでもなかったし、昔の全日本女子プロレスの時代は何千人もの入門希望者がいて、なりたくてもなれない時代だと聞いたんですよね。狭き門だったと。だから、私は完全に時代に拾われましたんだと思ってますよ(笑)。こんな時代の、このタイミングでなかったら、私はプロレスラーになれていないですよ!

――それが現在ではスターダムのトップスター選手ですから!

イオ いやいや。でも、時代に拾われたのであれば、スターという役をまっとうして、しっかり時代を救う救世主になりたいと思います。ぶっちゃけ、女子プロレスって、低迷しているじゃないですか。それをスターになって救いたいんです! ゼッタイできる自信がありますから!

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