パ・リーグ編

工藤公康(ソフトバンク)
「不満を外に発信することは逃げ場を求めているだけで何の解決にもなりません」
敗戦後のインタビューで、特定の選手をあからさまにコキ下ろす――なんてことを日常的にやっている監督もままいるが、それは裏を返せば自身の指導力不足を露呈させているのと同じこと。
そのあたりをしっかりわきまえる工藤監督は、昨季の“最多安打”ホルダー、中村晃が「マイナスのことを言わない監督だから、ポジティブになれる」と語るほど、選手批判を口にしない。
彼自身が、そうやって不満の“捌け口”を作らないからこそ、たとえコーチ経験がなくとも、選手たちは彼を信頼し、チーム内にもさらなる一体感が生まれていく。
いくら巨大戦力を擁すると言っても、その使い手たる監督への信頼がなければ、優勝争いなどできようはずもない。


大久保博元(楽天)
「運っていうのは動くんだ。お前が"運動"をすれば運も動く」
西武の二軍コーチ時代に発覚した菊池雄星に対する“鉄拳制裁”によって、すっかり世間に浸透してしまった暴力的なイメージのせいで、楽天ファンからは“就任反対運動”まで起こされた大久保監督。
だが、実際のところ、関係者から聞こえてくる指導者としての彼の評価はすこぶる高く、そのコーチング理論も的確ともっぱら。いわく、“運”を手に入れるためには、自分自身が“動”いて日々の努力を怠らないこと――。
この言葉を聞くだけでも、彼が単に、その陽気なキャラだけで現在の地位にまで登りつめたわけではないことは容易にうかがい知れるだろう。


伊東勤(ロッテ)
「残念ながら、(西武復帰は)絶対ないです。それだけは言っておきます」
黄金期の西武を支えた最大の功労者でありながら、監督退任時には自前で用意した花束を、相手チームの王監督に頼んで渡してもらう――という、悲しい自作自演をせざるをえないほど、古巣との関係が冷え込んでいた伊東監督。
ロッテを率いて3年目の今季もまだ、その“恨み”は骨髄に徹するようで、他の4球団にはそろって負け越しているのに、こと西武戦にだけはなぜか勝ち越しと、バチバチ感は健在。わかりやすい執念深さを発揮する。


森脇浩司(オリックス)
「微差は大差になる」
昨年刊行した自著のタイトルにもしているほど、森脇監督が好んで使うのが、この「微差は大差」なる言葉。
本来は、小さなことの積み重ねが大きな結果をもたらすといった、故事成語の「雨垂れ石をうがつ」的な意味合いで用いているのだろう。しかし、“40億円補強” を敢行した直後の“大コケ”を目の当たりにした今となっては、小さなボタンのかけ違いが予想もしない悲惨な結果を招く、という意味にも取れてしまうから、なんとも皮肉だ。


田邊徳雄(西武)
「(元同僚監督を)あまり意識せず、よそ行きなことはしない」
伊原春樹監督の更迭によって、昨季の途中から急遽采配を任されることになった田邊監督だが、低い下馬評をはねのけて今季は開幕から絶好調。
彼自身は、同一リーグで監督を務める伊東、工藤、大久保らに比べて、華やかさには欠ける地味な“職人”タイプとはいえ、彼の言う「よそ行きなことをしない」とは、つまり、最も西武らしい“王道”を行くということの裏返し。現在の好調ぶりは、そのシンプルな姿勢のたまものとも言えるのだ。


栗山英樹(日ハム)
「僕にできるのは“彼なら伸びる”と信じて活躍できる環境をつくってあげるだけ」
いっこうに結果の出ない斎藤佑樹に対する接し方からも一目瞭然だが、ポテンシャルの高い選手に対しては過保護なほどに愛情を注ぐのが栗山野球の真髄。
選手をひたすら信じてこそ、その可能性も引き出せる――という持論を、これまた盲目的に信じるのが栗山監督のスタイルだ。とはいえ、今や“侍ジャパン”の4番へと成長した中田翔や、エース格の吉川光夫らの成長は、そんな彼の“愛”のたまもの。人を動かすのも最後は気持ちなのである。

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