仕事始めの月曜日は要注意!

運動をしない人は筋肉量が少なく、その分、発汗率が悪い脂肪の割合が多くなる。しかも、細胞内の水分量も減っているので、脱水症状に陥りやすい。また、運動をしないと汗をかく能力も衰えてしまうが、高齢者の場合はそのケースが多く、やはり脱水症状を起こしやすいという。
さらに下村氏は、
「ストレスも熱中症の引き金になるんです。夫婦ゲンカのあとや、仕事始めの月曜日に、熱中症になるケースが多い。真面目な性格の方はご注意ください」

ちなみに、熱中症は発汗により、水分などが多量に失われたにもかかわらず、水分を補給できず、結果、体温が上昇することで起きる症状。冷却水などが不足し、車がオーバーヒートした状態に似ている。
「オシッコの色が濃い黄色なのは、そんな水分不足のシグナルです。トイレの回数が少ないのも同様で、こちらは高齢者に多く見られるシグナルです」(下村氏=以下同)

さらに水分の不足状態が続くと、ついには、めまいや"こむら返り"など、熱中症の初期症状が起きる。
「脱水、それに皮膚の血管拡張が急激に起きると脳への血流が減ることから、めまい、立ちくらみが起きるわけです。こむら返りが起きるのは、汗をかくと水分不足と同時に血中のナトリウム(塩分)濃度が下がるため。筋肉は多くのナトリウムを必要とするので、痙攣が起きるんです」

塩分が不足すると、こむら返りだけでなく、腕、腹部にも筋肉痛をともなう強い痙攣(けいれん)が起きるという。
「こうした初期症状が起きたら水分補給をさせて、涼しい場所で休ませる。それでも回復しなければ、医療機関に。死亡するのは、体温が40度を超えると体温調節中枢機能がマヒし、脳をはじめ、すべての臓器に異常が生じるからです」

また、呑んでいないのに二日酔いのような症状が出たときも熱中症の疑いが。
「頭痛、吐き気、倦怠感など、二日酔いは熱中症と症状が似ています。ただし、この段階だと、すでに中度の熱中症。医療機関に連れて行くのが原則です。ちなみに二日酔いも体力を奪い、熱中症を招きやすい。酒を飲むならば、仕事始めの月曜日は避け、休日前の金曜日にすべきです」

また、水分補強といっても、ただ水を小まめに飲むだけではダメだという。前述のように、汗には体の機能に必要な塩分も含まれており、これも補給しないと熱中症は防げないのだ。
薬剤師、鍼灸師でもある「和光治療院・漢方薬局」(千葉市)の平地治美氏は、こうアドバイスする。
「塩分は血圧上昇の原因とされ、塩分控え目が日常化している方も多いと思いますが、発汗の多い夏場に減塩するのは危険です。熱中症対策として、水と一緒に塩昆布、塩アメ、梅干しなどを摂りましょう」

平地氏は、手軽さからスポーツドリンク(塩分も入っている)の活用も勧めるが、一方で、自分でこれに代わる"補給液"を作ることも教えてくれた。
「水1リットルに塩を小さじ半分(2.5ミリリットル)。砂糖を大さじ半分(7.5ミリリットル)。それに、自分の好みでグレープフルーツやレモンの絞り汁を加えてもいいでしょう。外出時に持ち歩き、猛暑の際は、30分に一口飲んでください」(平地氏)

ガブ飲みは水分代謝のバランスを崩し、逆に水分がたまってしまう。すると、むくみやだるさが出て、胃腸障害を起こす危険性もあるので注意が必要という。
さらに平地氏は、食欲不振になりがちな夏場も、なるべく三食きちんと食事を取ることを勧める。
「水分(塩分)の半分は食事から摂っているんです。特に朝食を抜いて炎天下に外出するのは、就寝中に多量の汗をかいているだけに危険です」

また、自分はビールなどのアルコール飲料で十分、水分補給しているというビール党は大変に危険だ。
「ビールは非常に利尿作用が強く、5杯飲んだら6杯分の量が尿として出るといわれるほど。これでは補給どころかマイナスです」

では、いよいよ次に、熱中症よりも突然死のリスクの高い症状について、下村氏に解説していただこう。
「夏は熱中症だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの突然死にも注意が必要です。熱中症同様、多量の発汗で脱水し、血液がドロドロになってできた血栓(血の塊)が、血管を詰まらせることで起きるからです」

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