自民党の二枚舌をチクリ皮肉

「批判の対象になりやすい古舘ですが、規制が厳しくなる一方のテレビ報道にあって、政権のチェック機能を果たそうと、どのキャスターよりも頑張っているんです。安保法制によって、国民の政治への関心が高まり、その姿勢が改めて評価されたのではないでしょうか」(前出のデスク)

では、具体的に『報ステ』では、安保関連法案をどのように伝えているのか?
「6月15日の放送では、安保法制について憲法学者を対象にアンケート調査を敢行。回答した151人のうち、"憲法違反の疑いはない"としたのが、たったの3人であったことを報じ、その違憲性を浮き彫りにしました」(前同)

古賀氏の一件では、官邸に屈したともいわれた古舘と報ステだが、憲法学者を使って、"反安倍"の立場を間接的に表明したのだ。
「安保法案の強行採決が行われた7月15日、他局のニュース番組は、猛威を振るっていた"台風11号"関連のニュースに時間を割く中、古舘は"1ミリでも戦争に近づかないよう、この問題を取り上げるべき"と76分の放送時間の約半分を、法案の強行採決に費やしました」(夕刊紙記者)

また、近い将来の国民生活に多大な影響を及ぼす可能性がありながら、安保法制の話題に隠れ、大きく取り上げられることがないTPP問題に関しても、古舘は国民に"チェックの目を緩めるな"と警告している。7月30日の放送では、こんな場面があった。

番組では、「TPP交渉妥協か頓挫か」として、ハワイ・マウイ島で行われていたTPPの12か国閣僚会合が大詰めを迎えていることを報じたのだが、
「VTR明けに、コメンテーターの中島岳志氏が、12年の衆院選挙時の自民党のポスターを紹介したんです。そこには"ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す!! 自民党"と書かれていたんです。古舘は"TPP断固反対"の部分を指差し、解釈変更で強引に法案成立へと突き進む安保法案と関連づけ、"ここは解釈を変更したということですか?"と皮肉りました」(前同)

また東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の整備計画が白紙撤回された問題への関心が高まる中、7月22日の放送で、東京都の舛添要一知事をスタジオに呼び、
「検証して、どこに問題があったかやらざるをえない。どの役人も"俺の責任じゃない"と言うでしょう。(中略)最悪の無責任体制だ」
との舛添知事の衝撃コメントを引き出したのだ。

「知事の怒りは相当のもので、文部科学省の"全部密室が最大の問題"や、ゼネコンは"国会で参考人招致すべきで、みんなの前で言いなさい。(当初の予算)1300億円じゃできないと説明すべきだった"と、激しく批判したんです。舛添知事は、自民党の推薦で当選したはずですが、部分的には自民党批判とも取れそうなところにまで、踏み込んだことには驚きです」(前出のデスク)

この日の舛添知事には、
「他人事のように批判するのは、どういうことか?」
と、責任逃れにも見える姿勢への批判の声も少なくはないが、それでも、こうした本音を引き出し、見応えあるやり取りを演出したのは、やはり古舘と報ステの手腕と言えるだろう。

そんな古舘が、そのキャスター生命をかけて臨んでいるのが、反原発だ。
「12年3月に放送された、原発問題を取り上げた報道SPの最後、"もし圧力がかかって番組を切られても、私はそれはそれで本望です"とカメラ目線で語っています。パフォーマンスともいわれましたが、以降、その姿勢は崩れることなく、8月11日に再稼働した川内原発についても、NOを言い続けました」(前同)

この姿勢、もっと評価されてもいいような気がするのは本誌だけだろうか?
「キャスターが私的な見解を言ったり、意図的な演出を加えてニュースを報じる手法は、前任者の久米宏が『ニュースステーション』で確立したもの。古舘が嫌われやすいのは、久米と比較されたときに"生ぬるい"という印象を与えていたからでしょう」(同)

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