吉本を観て笑い"がん退治"に

1991年12月、伊丹院長は、吉本興業の演芸場「なんばグランド花月」(大阪市)で、ある実験を行った。
「20~62歳までの男女19人に、約3時間にわたって、中田カウス・ボタン、トミーズ、月亭八方などの舞台を見て、大いに笑ってもらったんです」(前同)

開演直前と終演後に、血液を採取。血液からNK細胞を取り出し、それを、培養したがん細胞の中に入れて、がん細胞がどれほど殺されたのか"攻撃力"を比べた。
「結果、ほぼ全員のNK細胞の、がん細胞に対する攻撃力が、終演後は3~4倍も高まっていたんですね。被験者19名中8名は、乳がん、悪性リンパ腫、糖尿病など、なんらかの病気で通院している方でしたが、健康な方と変わらず、NK細胞は活性化していました」(同)

この実験結果は94年5月、「日本心身医学会」で発表され、伊丹院長は「同学会推薦論文指定」という高い評価を得ている。
「米国ロマリンダ大学のリー・バーク先生が、コメディなどのユーモアビデオを被験者に見せた実験でも、同様の結果が出ています。キラー細胞をはじめ、Bリンパ球、免疫機能を高めるインターフェロンγの増加が確認されたんです」(同)

続けて、伊丹院長の患者の実例を挙げよう。
他の治療も並行しているので"相乗効果"とは思われるが、前立腺がんが骨に転移し、余命1年と大学病院で言われてきた患者の話だ。"お笑い療法"を取り入れ、それから11年後の現在、72歳。今も元気に通院し、がんは見られないほど縮小しているという。

まさに"ミラクル健康法"。それにしても、なぜ"笑い"はNK細胞を活性化させるのか?
「耳や目から入った"面白い情報"が神経系を通じ、大脳辺緑系と視床下部へ伝えられ、"愉快ホルモン"とも呼ばれるβ-エンドルフィンが分泌。脳から血流を通じて全身に運ばれ、NK細胞の受信装置(レセプター)に接着し、活性化させると考えられます」(同)

しかも、この"笑い"の効果は、がんだけにとどまらない。
「96年、吉野槇一・日本医科大学教授(当時/リウマチ科)は、リウマチ患者を対象に、"笑い"の効能を試す実験を行ったところ、がんの場合と同様の結果が出ました。リウマチは"免疫異常"で起きますが、"笑い"は単に免疫力を高めるだけでなく、免疫異常を正常化する作用も持ち合わせているようです」(同)

さらに、中島英雄医師(故人=元中央群馬脳神経外科病院理事長)は、"笑い"が脳の血流を良くし、認知症予防につながり、脳梗塞や心筋梗塞を起きづらくすると発表。また、米国ウェスタン・ニューイングランド大学のディロン博士は、人が笑うと「免疫グロブリンA」という免疫力を高める物質が増え、風邪の予防に役立つと発表。さらには、糖尿病が改善するという報告もある。
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