そうなると、フィクション色が強いように感じられるかもしれないが、三谷氏は史実に相当なこだわりを持っているようだ。たとえば、真田家一行が土地の者に襲われる場面や、農民が山の木材を巡って対立するシーンが出てくるが、「戦国時代は武将にばかり目がいきがちですが、農民や町民にとっても生き死にが懸かった時代。戦になれば彼らも駆り出されるし、せっかくの田畑が荒らされてダメになることもある。だから、落ち武者狩りをしてお金を稼がなければいけないし、木材や山菜が採れると分かれば村を挙げて、それを奪いに行くこともあったんです。そうした部分もドラマでは丁寧に描かれていますね」(前同)

 また、有名武将たちにも、歴史ファンが喜びそうな工夫が隠されている。たとえば、徳川家康(内野聖陽)は、いらだつと爪を噛むくせがあったのだが、ドラマ中の家康も、それを実践(?)している。南関東で覇を唱える北条氏政(高嶋政伸)は、初出のシーンで湯漬けを食べていたが、これにも“裏”が。「小さい頃の氏政は飯に汁をかけて食べるのが大好きだったんですが、その際、うまく調整できずに何度も汁を継ぎ足して食べていた。その様子を見た父親の氏康が“毎日食っている飯と汁の量も測れないとは、北条家は氏政の代で終わりだろう”と嘆いたエピソードを彷彿させます」(同)

 さらに、4話から本格登場した織田信長(吉田鋼太郎)も、史実に忠実だ。「短気で知られる信長は、家臣であろうと客人であろうと言葉数は少なく、初対面の相手でも一言、二言しか発しませんでした。ドラマでの、昌幸と信長の初対面シーンは、まさにその通り」(戦国史研究家) その信長、大胆さと豪胆さで知られる一方、実は潔癖症で、「底の厚いゲタをはかないとトイレに入れなかった」(前同)そうだ。

 いずれにせよ、近畿と中部を掌握した信長は徳川家康と協力して武田領をも席巻し、各方面に勢力を拡大。その象徴として、安土城を琵琶湖畔に築城した。安土城は、それまで誰も見たことのない大規模天守を備え、最新技術を用いた石垣も多様。その華麗さと巨大さは、当時の人にとっては度肝を抜かれるレベル。第4話で昌幸と幸村が圧倒されるシーンが、それだ。しかし、1582年に本能寺の変が勃発し、“織田政権”が崩壊することで、戦国期の日本は大きな混乱に陥るのだ。当然、織田家に身を寄せようとしていた真田家もその波に飲ま込まれ、新たな危機に陥る……。

 ますます面白くなる『真田丸』を見る前に、この記事を読み返して復習すれば、もっと面白くなりますよ!

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