さらに官邸は、同じくアキレス腱である“農村票”でも期待しているという。かつて、地方の農村は自民党の大票田だったものの、昨年の10月、政府が環太平洋連携協定(TPP)に大筋合意したことで人気がガタ落ち。業界紙である『日本農業新聞』が直後に実施した世論調査では、安倍政権の支持率は18%と、かつての蜜月がウソかのような現実を突きつけられたのだ。「その逆風の中、進次郎氏は、“TPP地方キャラバン”と称して、11月から全国を行脚。さらに、“古米の味を知るために試食会を開こう”などと業界のために動き、支持を集めているのです」(全国紙政治部記者)

 その一方、農協や漁協などと強いつながりを持つ農林中央金庫に対して「融資のうち農業に回っている金額は0.1%しかない。農家のためにならないなら、いらない!」と、手厳しい“進次郎節”も炸裂させている。「進次郎氏の最大の強みは、徹底した現場主義。批判や反対がある現場にあえて飛び込み、直接話し合うことで彼らの本音を聞き出す。そのうえで解決策を練っていくというのが、彼のスタンスなのです」(鈴木氏) だからこそ、耳の痛い話を切り出されても、彼らからの支持が切れないのだ。官邸の要求は、それだけにとどまらない。若者の支持までも、その双肩に担わせようとしている。今夏から選挙権が18歳以上に引き下げられるが、「自民党はシルバー層を意識した政策を打ち出す傾向があり、若者の自民離れにつながっています」(常井氏)

 そこで安倍政権は2月3日、「2020年以降の経済財政構想小委員会」の事務局長に進次郎氏を起用。若者が不安を抱える年金などの社会保障問題について議論させることにしたのだ。「参院選で改憲を実現するためにも進次郎氏を“表の顔”に据え、若者票や女性票の取り込みを図っていく考えなのでしょう」(前同) 事実、党が制作する若者向けのポスターの中央には、進次郎氏の写真がデザインされる見通しだ。

 “一強”と呼ばれる安倍政権が、なりふり構わず、その人気にすがる進次郎氏。敵を味方に変え、味方をさらに引き込む、まさに選挙勝利のキーマンが、今夏、どのような“伝説”を作るのか注目だ。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2
  3. 3