その緊張状態は、近年例を見ないもの。3月8日、中国の王毅外相が現在の朝鮮半島情勢について、「一触即発で火薬の臭いが充満している」と危機感を表明するほどなのだ。

 では、万が一、朝鮮半島で“火薬に火がつく”こと、さらには金第1書記が「核のスイッチ」に手をかけることはあるのか? 前出の小関氏はこうみる。「北朝鮮は、一度振り上げた拳を簡単に引っ込められません。一方の米国といえばトランプ氏などの強硬派が支持を得ています。こうした支持が広がり、北朝鮮に対し、なんらかのアクションを求められる場面がオバマ大統領に訪れないとも限りません。その中には、北朝鮮を潰しておこうとの決断も含まれます。北朝鮮は米国は動かないとみて、挑発をエスカレートさせていますが、偶発的アクシデントも重なれば、場合によっては、“第2次朝鮮戦争”という展開も最悪考えられます」

 実際そのとき、どんなことが起きるのか。小関氏が続ける。「北朝鮮が韓国に対して核兵器を使う可能性は低いでしょう。核汚染されては、南北統一をしても自国民を住まわせることはできませんから。でも、日本や米国に対してはその限りではない。核弾頭を積んだミサイルだけでなく、放射性物質を撒き散らすダーティーボムを使うことだって考えられます」(前同)

 一方、外交評論家の井野誠一氏は、北朝鮮が核兵器を使用するケースを、こうみる。「2つあって、1つは韓国と武力衝突が避けられない状況になったとき、先制攻撃として、韓国の戦意を喪失させるために。もう1つは韓国ないし第三国と武力衝突に至り、北朝鮮の劣勢が必至になったとき、戦況を有利にするためです」 井野氏は、北朝鮮が実用化(ミサイルにおいては小型化、軽量化)が、どの程度進められているか、確かな情報を各国ともつかめていないとしながらも、「弾道ミサイル、中距離ミサイル、潜水艦からのSLBMはじめ核魚雷、核地雷など様々な核兵器の開発・改良が進められています。そして、通常の核兵器のみならず、放射性物質をばら撒くダーティーボムは、生物化学兵器とともに、北はいつでも使用できる。この核汚染戦術は見逃せません」(前同)

 だが、万が一、北朝鮮が核兵器を使用した場合、核の抑止力を担う“世界の警察”アメリカは即座に報復の核兵器を発射、結果、金正恩政権は崩壊する。ゆえに北朝鮮は先制攻撃するはずがないといわれてきた。

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