00年、エアシャカールで勝ったときは、レース前から波乱ムードが充満していました。出走すれば、圧倒的な人気を得たはずのフサイチゼノンにアクシデントが勃発。出走する全馬にチャンスが生まれるという戦国ムードとなり、しかも、場内の歓声に驚いた3番人気馬、ラガーレグルスが、ゲートの中で騎手を振り落として競走中止に。まだ、何かあるかも……という競馬場全体が落ち着かない中でのスタートでした。
同じ優勝でも3者3様。どれが一番というのはありませんが、“強い馬が強い競馬をして勝つのが競馬の王道”という僕の信念は、昔も今も変わりません。今年の「皐月賞」で3強を形成するサトノダイヤモンド、マカヒキ、リオンディーズの強さは、もう、十分すぎるほどよく分かっています。
分かったうえで、敢えて言います。競馬に絶対はない――。僕が騎乗するエアスピネルとの力差は紙一重。レース当日、落ち着いていれば、チャンスは必ずあるはずです。ダメだと思ったら、本当にそこで終わり。ダービーに向けて、悔いのないレースをしたいと思います。
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