お酒のお供には、脂がのったカルビ――男の至福のときだが、「肉や脂身は体に悪いから」と箸を止めるお父サンも多いはずだ。だが、桜美林大学名誉教授の柴田博医学博士は「日本の中高年はもっと積極的に肉を食べるべき」という。「中高年になると、肉は控えて野菜中心の食生活を心掛ける方がいるのですが、こんな低栄養の食事を続けると、逆に長寿をまっとうできなくなります」(前同)

 これは歴史的に見ても明らかで、人の平均寿命が50歳を越えるようになったのは、肉をしっかり食べるようになってからだ。「肉を食べることで、免疫細胞の材料となるタンパク質や免疫力を上げるビタミン類を摂取できるようになったことが大きい。免疫力が上がることで、感染症などで命を落とすことも少なくなり、平均寿命を押し上げたのです」(前出の医療ジャーナリスト)

 免疫力は死亡率トップのがんを予防するうえでも大切になる。肉食はがん予防にもいいというわけだ。「また、これは意外に知られていないのですが、肉食は、うつ病予防など精神衛生にも効果があるのです」(前出の柴田博士)

 肉には、うつ病を予防する神経伝達物質・セロトニンの材料となるトリプトファンが豊富に含まれ、多幸感をもたらすアナンダマイドという物質も多い。焼き肉店でモリモリ肉を食べる人が元気で朗らかなのは、こうした効果があるのかもしれない。「肉を食べると太る、体に悪いという人もいますが、牛、マトン、鹿肉には脂肪を燃焼させるカルニチンなどが多く含まれています。また、“年を取って脂っこいものが苦手に”というのは、肉は体に悪いという強迫観念からきた思い込みじゃないでしょうか」(前同)

 ちなみに、日本人が一日に必要な脂質は60グラムといわれているが、これに届いてない人が多い。その意味でも、もっと肉を食べるべきなのだが、一つ注意したいことがある。「肉の脂質は飽和脂肪酸ですが、これを過剰に摂取すると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる。なので、必要な脂質60グラムをすべて肉から摂取するのではなく、不飽和脂肪酸を多く含む魚も食べなければならないのです。簡単に言えば、食事で魚料理と肉料理を半々にすることですね」(前出の医療ジャーナリスト) 焼き肉屋の後は居酒屋で刺身を食べる――懐具合はともかく、こんな感じで心身ともに、元気になれる。

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