10分でわかる「パナマ文書」 世界が震撼するスキャンダルを完全解説の画像
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 世界を揺るがす大スキャンダルも庶民には関係ない対岸の火事だと思っている皆さん。本当は、もっと怒ってもいいことなんですよっ!

 今世紀最大級といわれる金融スキャンダルに、世界中が揺れている。4月4日、中米・パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」社から、内部文書が大量に流出。「パナマ文書」と呼ばれ、世界中で一斉に報じられているのだ。「これは、ひと言で説明するなら“世界各国の大金持ちや大企業が行ってきた税金逃れや資産隠しの情報”です。それが今回、世界中にバラ撒かれたというわけですね」(全国紙経済部記者)

 今回流出したのは、モサック社が過去40年間に行ってきた業務の全記録。その総数は、なんと1150万件。データ総量は2.6テラバイトにものぼる。「同社は“ハッキングによる流出だ”としていますが、内部告発説もあります。データは当初、ドイツの南ドイツ新聞社に渡ったんですが、あまりに膨大なため、単独ではどうにもならず、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に協力を要請。現在、約80か国の400人近いジャーナリストの協力のもと、まだまだ解析が進められている最中で、最終的な調査結果は5月に公表される予定になっています」(前同)

 その過程で、世界の要人や企業の名前が浮かびつつあるというわけだ。それにしても、そんな重大文書が、なぜ中央アメリカの小国・パナマから流出したのだろうか? そのカギは、モサック社の“業務内容”にある。「同社は、企業や大富豪が世界中の“タックスヘイブン”と呼ばれる場所にペーパーカンパニー(登記だけして実態のない会社)を作る際の代行会社でした。そのオフィスが、パナマにあったというわけです」(同)

 タックスヘイブンとは、いったい、どのようなものなのか。それを知るためには、パナマのことを理解する必要がある。「パナマは、主要産業も自主通貨もなく、米ドルに依存している国。その代わりに、世界の金融の一大中心地として企業を積極的に誘致することで潤ってきたのです」(経済誌記者)

 外国企業を呼び込むため、パナマでは、法人がパナマの国外で行った活動による所得を非課税にしている。つまり、パナマに会社を置いていても国外の場所で業務を行っていれば、税金はかからないのだ。「また、法人の証券や預貯金にも税金はかかりません。これに目をつけた企業が、次々とパナマにペーパーカンパニーを置き、そこに株式投資などで資金を移す。こうやって、自国での納税額を低く抑えているのです。こうした場所は世界に多数あり、中でもカリブ海に浮かぶイギリス領ケイマン諸島には、5階建てのビルに1万8000社が登記しているなど、ほぼ無法地帯です」(前同)

 海難事故などのニュースで「パナマ船籍の船」という言葉を聞いたことがある方も多いだろうが、これもカラクリは一緒。パナマの会社で船を登録しておけば、登録料はかかるものの、その他の税金はゼロなのだ。実は、タックスヘイブンを使っての節税は、現在の法律において厳密には違法ではない場合が多い。「とはいえ、完全に合法でもなく、多くの企業や資産家が、巧妙に資産を分散させて法の網をうまくすり抜けている。“違法でない”というだけで、れっきとした脱税行為です」(前同)

 さらに問題なのは、影響が単に当事者の財布にとどまらないことだ。「数年前、トヨタやみずほ銀行など日本の企業が、これまでにケイマン諸島を利用して“節税”した額の累計は約55兆円という報道が出ましたが、仮に、きちんと日本に納税されていたら、現在の法人税率で計算すると、14兆円以上にも上ったはずです。それを補てんするために消費増税や、さまざまな社会保障の削減が行われたわけですから、納得いきませんよね」(前出の経済誌記者)

 さらに、タックスヘイブンへの資金流出は、日本国内に出回る金が、それだけ減るということでもある。「企業の株価は上がっても給料が上がらず、国内消費が減速し、不景気が続く理由はそれ。2013年の時点で、世界中のタックスヘイブンで個人分だけでも2100兆円以上が滞留しており、日本は、その2位の金額を占めています。この資金が日本でちゃんと回っていたら、今頃は全国民の所得が月に10万円近くは違ったという試算もあるんですよ」(前同)

 前述のようにタックスヘイブンの問題は、これまでにも繰り返し報じられてきたのだが、今回のパナマ文書が、これまでと違ってセンセーショナルだったのは、数多くの著名人や要人の名前が並んでいたことだ。すべての解析は終わっていないが、すでに世界的サッカー選手のリオネル・メッシや俳優のジャッキー・チェンといったセレブに加え、英国のキャメロン首相の父親、ウクライナのポロシェンコ大統領など、世界各国の指導者や周辺人物の名前が出るわ出るわ。「財産を海外に移して私腹を肥やし、国内では庶民がきちんと納めた税金で提供される公共サービスに“ただ乗り”していたわけで、激烈な批判が出るのは無理もありません」(同)

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