「ソフトバンクや広島の選手なら、個々が局面に応じてやるべきことを考え、相手投手に1球でも多く投げさせようとしたり、ランナーを進める打撃をします。ですが、今年の巨人打者は、3ボール1ストライクの状況で簡単に打ちに行って投手を助けてしまうシーンが目に余る。ゲーム全体を考えず、来た球をただ漫然と打ってるだけに見えてしまうんです」(前同)

 これは、もちろん選手だけの責任ではなく、監督やコーチが教えていかなければならないことではある。「つまり、今の巨人は若手の教育ができていない。だから、伸びる選手もいないんです」(同) その「育成能力の欠如」が、現在の巨人の最大の泣きどころである選手層の薄さを招いたと、あるスポーツ紙デスクは語る。「FA制度の導入以来、巨人はカネにモノを言わせて他球団の主力選手を毎年のように“強奪”してきましたからね。地道に生え抜きを育成してきた首位の広島とは、まさに対照的ですよ」

 落合博満に始まり、広澤克実、清原和博、小笠原道大。投手では工藤公康、杉内俊哉など、巨人は自前のスター選手を育てるより先に、他球団から実力者を引き抜いてきた。上がつかえて若手が伸びずとも、勝つことは勝てていたわけだ。ところが近年、その手法も使えなくなってきている。「ヤクルトが川端と結んだ1億7000万円の4年契約が象徴的で、FA資格を得た選手を複数年契約で優遇して流出を防ごうとするチームが増えましたからね。また、最近はFA資格を得ても、いい選手ほどメジャーに移籍する可能性もある。もう巨人が“野球界の頂点”という時代は終わったんです」(前同)

 “球界の盟主”の座にあぐらをかいているうちにチーム作りのノウハウを蓄積し損ね、気づけば高齢化する主力の穴を埋める若手が誰もおらず……とは、笑い話にもならないではないか。「今年の惨状は、いわば、この20年以上のツケを一気に払わされているようなもの。由伸監督には酷な話です。たとえ最下位になろうと、球団は原因をしっかり分析して、時代に合った再建策を取ってほしいですね」(前出のスポーツ紙記者) シーズンも折り返し、栄光への扉は目に見えて閉じていくばかり。現実は厳しいが、目先の勝ち負けだけでなく、先々を見据えたチーム再建のチャンスだと思って、球団には本気で取り組んでもらいたいものだ。

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