「中国上層部も、いきなり日本と戦争する気はないでしょう。ただ、中国軍の中には、反日感情から英雄気取りで向かってくる者もいますからね。今回、東シナ海上空で日中両機が一触即発の事態になった一因は、そこにあると思います。今回は大事に至りませんでしたが、局面によっては偶発的に中国軍機のパイロットがボタンを押す可能性も想定しておかなくてはなりません」(前出の井上氏)

 こうしたスタンドプレーや“事故”から起こる戦闘行為が、思わぬ戦端を開かないとは限らないわけだ。そして、そこで気になってくるのが、中国の弾道ミサイルである。「日本にとっての脅威は、北朝鮮のノドンなんかより、明らかに数も精度も段違いの中国の“東風21”です」(前出の防衛省関係者) 英国の「国際戦略研究所」がまとめた最新の軍事報告書によると、中国は東風21を116基保有。中には、1基で複数の核弾頭を搭載し、各々の核弾頭がそれぞれ別の目標地点を攻撃する新兵器もあるという。

「昨年の台湾総統選で独立派が勝って以降、中国は沿岸部に、この東風21を大量配備。そして、その照準は台湾と日本に合わせられています。今後、局地的にでも戦闘行為が行われ、政治決着が不首尾に終わった場合、このミサイルが火を吹かないとは言い切れません」(前同)

 安保法制などで中国を刺激してきた安倍首相にとっては、この困った隣人をどういなすかが課題となる。「中国が最も嫌がるのは、多国間で協調して動かれること。韓国やオーストラリア、インドなどと組んで海上を共同パトロールすれば、中国もそう簡単に尖閣には手を出せません。また、中国の行動は間違っているというメッセージを世界に向けて共同で発信でき、一石二鳥です」(前出の伊藤氏) 今や、日本の3倍近い軍事費を投じる中国。その中国の野望をくじくには、他国との協調も大切になってくる。悲願の“改憲”にはやる前に、安倍首相の仕事はまだまだあるのだ。

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