これまでは渋滞時の運転術や、今年の渋滞予測について解説してきたが、ここでは、簡単にできる疲労解消術を紹介していこう。解説してくれるのは、『デスクワークの肩こり・腰痛・身体疲れを取る』(実務教育出版)の著書があり、東京・赤坂の「KMAPカイロプラクティック&スポーツセラピー」で施術をする河合智則氏だ。

 そもそも、運転や同乗するに当たって、河合氏が「避けたい姿勢」と話すのが写真(1)。この姿勢には、2つの問題点があるという。

「1つ目は、腹部を潰してしまっていることです。安定性が低下するこの姿勢では呼吸がうまくできず、体全体への酸素供給がうまくいきません」(以下、すべて河合氏)

 つまり、円滑な呼吸ができないことで疲労が蓄積しやすくなるというわけだ。さらに、腰椎(腰の背骨のカーブ)を乱していることが2つ目の問題点で、腰への負担を増大させてしまっているという。では、河合氏が考える望ましい運転姿勢とは、どのようなものだろうか。

「膝の角度を135度くらいにしたうえで、腰のカーブを維持することが重要です。この姿勢で、首や顎が浮かない、引きすぎない状態で前を見るのが、頸部にとっても好ましいですね。同時に、腕は肘に少しゆとりを持って伸ばせる位置を維持してほしいです」

 この姿勢が写真(2)である。クッションを使うなどし、ぜひ、この姿勢を保ってもらいたいが、それでも、渋滞時には通常運転時とは異なる負担がかかるという。

「ストレスが自律神経系を乱して血行に影響、痛みや違和感を感じやすくなります。また、前脛骨筋というすねの筋肉が、長時間持続して同じ姿勢になることで足のむくみも招き、やはり血行不良になります」

 筋肉は収縮することによって、“血液のポンプ”としての役割を果たし、疲労物質を押し流してくれる。つまり、同じ姿勢でいることになる渋滞は、何もしない状態であるとはいえ、体に疲労物質を蓄積させているのだ。そのため、高速道路や一般道にかかわらず、休憩時には体を動かすことが大切だという。その際に効果的なストレッチ法を河合氏に聞いた。

 まず1つ目が、意外に思われるかもしれないが、「かかと上げ」【写真(3)】だ。前述したように、渋滞時は前脛骨筋がずっと同じ姿勢でいることで、すね近辺の筋肉が硬直してしまう。かかと上げには、ひざより下の足の疲労やむくみを解消する効果が期待できるという。ポイントは「できるだけ、ゆっくり、かかとを戻す」ことだという。

 2つ目は、多くのドライバーの天敵とも言える、肩や首の疲れ対策だ。写真(4)をご覧いただきたい。

「腕を斜め下方に伸ばした状態で、頭部を反対側に倒してください。そうすることで僧帽筋という肩まわりの筋肉が伸び、ハンドル維持のために硬直してしまった肩や首の疲労回復につながるはずです」

 また、長時間運転に効果的なストレッチ法が、写真(5)と写真(6)だ。

「写真(5)は、足を後ろに軽く1歩引いて同じ側の腕を上げ、体を反らしながら反対側に倒してください。長時間運転で収縮した腰や股関節の改善につながり、腰痛を軽減できます」

 このストレッチは、長時間の座位による疲れにも効果的だという。写真(6)は、腕を120度ほど上げた状態(外転)で、そのまま後方に持っていき、さらにその際、もう片方の腕で鎖骨を押さえてストレッチするというもの。

「運転姿勢というのは前方に丸まる形で、それによって胸部の筋肉が収縮してしまいます。このストレッチは、大胸筋や小胸筋といった胸の筋肉を伸ばす効果があるんです」

 これらのストレッチは、筋肉を伸ばした姿勢で1~2秒止めるという動きを何回か繰り返すと、さらに効果的だという。渋滞や長時間の運転にはつきものである疲労や全身のこり。これらの撃退術を駆使して、疲れ知らずの運転を実感していただきたい!

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