さて、冒頭で述べたもう1つの“危険に過ぎる人事”が――。「それは、自民党農政部会長の小泉進次郎氏(35)の処遇についてです。先の参院選でも応援演説に引っ張りだこで、自民党単独で57議席を確保する結果に大きく貢献しました」(前出・ベテランの政治記者)

 高まる注目度を反映し、参院選後の党役員人事や安倍内閣の改造人事でも、進次郎氏の名は幾度となく取り沙汰されたという。「特に内閣改造については、確実に参院選の論功行賞があるだろうと踏んで“復興担当大臣での入閣”という話が、まことしやかに囁かれていました」(前同) 東日本大震災から5年。福島の復興支援に積極的に取り組んできた進次郎氏だけに、この筋はいかにも説得力があった。

 だが、去る8月3日、改造内閣の閣僚名簿に、彼の名はなかったのだ。「党内には、衆院当選5回以上・参院当選3回以上で閣僚経験のない“入閣待機組”が70人以上もいましたから。首相は、党内で不満が爆発しないよう、彼らを優先したのでしょう」(前同)

 自民党関係者が言う。「一方、官邸は進次郎氏に内々に打診をしたものの、進次郎氏側が断りを入れたという話もあります」 その過程はどうあれ、これが安倍政権にとって命取りに発展する大ミスになろうとは思いもしまい。進次郎氏本人も再三、言ってきたように、「2020年の東京五輪以降、高齢化や福祉問題、財政の諸問題など、解決せねばならない課題が一気に飛び出す。これを政治で対処するのが、政治家としての自分の仕事だというのが、進次郎氏の持論なのです」(自民党番記者)

 そこまでは総理大臣になるための勉強なり、人脈なりの蓄積を日々、重ねていくのだろう。そして、「安倍首相の政策は、進次郎氏と真逆を向いてます」と言うのは、永田町ロビイスト。「景気浮揚対策として、ジャブジャブ何兆円も国の金を市場につぎ込んでいますが、これは自分の名誉のためでしかありません。“アベノミクス”の看板のため、将来世代に借金を背負わせてまで保身に走っているようにしかみえません」(前同)

 参院選は無事に終えたものの、安倍首相の求心力は低下の一途を辿っているようだ。「3年半に及ぶ民主党政権の後遺症で、有権者は“あれよりマシ”と、安定した政権運営を期待して投票しているだけ。決して積極的に自民党を支持しているわけではないのです」(政治評論家の有馬晴海氏)

 かねてより交流のある石破氏も反旗を翻し、協調する小池氏も父・純一郎氏と電撃タッグを結成。進次郎氏を中心に、安倍政権にNOを突きつける、新たな潮流が蠢きだした。「“最後は父しか信じない”と言われるほど父親の絶大な影響下にある進次郎氏は、今後、その意を受けながら永田町内で立ち回ることになる。安倍政権が盤石なうちは官邸のいい手駒だったかもしれませんが、これからはそうはいかないでしょう」(小泉政権下で高官を務めた人物)

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