その阿部慎之助も、“V逸”の責任は重い。「5月末に阿部が右肩痛から復帰すると、打線に核ができ、チームも一気に追い上げムードになったんですが……」(ベテラン記者)

 さすがチームの柱といったところだが、ベテラン記者は、阿部に対して違った見方をする。「阿部の年齢を考えれば、大事を取る気持ちも分かるんですが、チームの状態が状態だけに、少々、無理してでも、もっと早い時期に“ゲームに出させてください”と首脳陣にアピールするぐらいの気概が欲しかった。もし、阿部が、あと1か月早く復帰していたら、と思わざるをえません」

 次に、今年の巨人の大きな特徴として挙げられるのが、「勝利の方程式の崩壊」だ。リーグ1位の防御率を誇る菅野が、今季8勝しかしていないのは、リリーフ陣が崩壊していることの何よりの証拠だろう。リリーフ陣の中でも特に責任重大なのは、澤村拓一だ。リーグ1位の34セーブという成績だけを見れば、今年の巨人の「功労者」とも言えるが、野球評論家の黒江透修氏はこう言う。

「澤村はここぞという大事な試合で打たれる。菅野なんか、彼のせいで勝ち星をかなり失っているのでは」

 黒江氏の指摘通り、澤村は“天王山”ともいわれた8月7日の広島戦で、勝負弱さを露呈してしまった。「5連勝で勢いに乗る巨人は、広島との直接対決でも2連勝。この日も勝てば、11.5あったゲーム差が3.5まで縮まる大事な試合。1点リードのまま最終回を迎え、澤村が登板。ツーアウトまで取ったんですが、続く菊池に不用意に投げた球を痛打され、同点。結果、サヨナラ負けでした。あの負けで、追い上げムードが一気になくなってしまいました」(スポーツ紙デスク)

 リリーフ陣の崩壊もさることながら、さらに深刻なのが打撃陣の不振だ。「こんなに打てないのは何年ぶり、いや、何十年ぶりかというほど」(前出のベテラン記者) 今でこそ、チーム打率.250はリーグ3位だが、5月は.227とリーグ最下位。総得点476も、リーグ4位の数字だ。

 戦犯を挙げるとすれば、首位打者をひた走る坂本勇人以外、全員と言わざるをえないが、中でも断罪されるべきは、村田修一とギャレットだろう。まずは、ギャレット。ヤンキースから鳴り物入りでやってきたのだが、額面通り4番として使えれば、優勝の行方はまだ分からなかったかもしれない。しかし、蓋を開けてみれば、3、4月の打率が.215と大きな期待外れだった。「ようやく戦力になり始めたのは、6月以降。しかも、4番としては使えず、かろうじて6、7番に使うしかない。これで年俸3億円は割に合いません」(前同)

 村田も同じく、ここにきて調子を上げ、打率.292と3割近いが、“帳尻合わせ”が始まったと陰口を叩かれているとか。「村田は今年が契約最終年で、“今季限りで……”という声も聞こえ始めていたんですが、最後に“帳尻合わせ”のように打率を上げてきました。この成績では、球団もクビにできないどころか、高額な3億円の年俸も下げづらい」(同)

 確かに打率だけを見れば立派な数字だが、そんな陰口が聞こえてくるのもうなずけるのは、村田がとにかくチャンスに弱いからだ。「リーグワーストとなる併殺打20からも分かるように、打ってほしいときに打てない。3割近く打っているのに、6月半ばまでは打点13。ランナーがいない場面でヒットを打って、自身の打率は落とさないのに、チームの勝利には貢献しないんですから、たまったもんじゃない」(同)

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