とはいえ、12月に来日するプーチン大統領は、旧KGBの出身で、世界が恐れるコワモテの指導者だ。実は鈴木代表は、そのプーチン氏が最初の大統領選挙に当選して最初に会った外国の政治家でもある。当時は、小渕首相が脳梗塞で倒れ再起のメドが立たず、森自民党幹事長の登板が確実視されていた時期。鈴木代表は、小渕首相の特使としてモスクワに派遣された。

「クレムリンの一室で、プーチン大統領は無表情で椅子にもたれかかっていました。私は何とかしようと思い見回すと、そこは小渕・エリツィン会談が行われた部屋でした。そこで私はこう言ったのです。“1年半前、私のこの席に座っていた小渕総理は今、生死の境を彷徨っている。その総理は倒れる直前、日露関係を俺が動かすんだと言った。だから私は今、この席に小渕総理がいるつもりで大統領に会っている” 感極まって私がポロッと涙をこぼすと、椅子にもたれていた大統領が前屈みになり、身を乗り出して私の話に相槌を打ってくれました。彼にはその後も何度か会っていますが、筋を通せば分かってくれる、情の通じる男だと思います」

 一方の安倍首相もタフな一面を持つという。日露交渉においては、アメリカの圧力が常について回るといわれるが、今年初頭、日露交渉を察知した米政府は、例によって日本政府に圧力をかけてきたという。

「安倍総理は2月のオバマ大統領との電話会談で、“ロシアと領土問題が残る日本の立場は貴国とは違う”といって、その圧力をキッパリと退けています。かといって対米関係がこじれたわけではなく、オバマ大統領の広島訪問も実現しています」 日露両国とも、現政権は強固な基盤と意志を持っているだけに、トップ同士が決断すれば領土問題が一気に進展する可能性が高い。

「日本はソチで約束した8項目の経済協力を実施すべき。そうすれば日本の真意が伝わり、平和条約締結と歯舞、色丹の2島返還の道筋がつくでしょう。すると、残る2島についても、様々な角度からの議論が成熟していくはずです。世界の大国である日本とロシアが領土問題を解決し、平和条約を締結することは、世界の安定に繋がる。日本は中国への牽制にもなるし、ロシアの原油を輸入できれば、エネルギー政策も飛躍的に安定しますよ」

 12月の首脳会談が、実りあるものになることを期待したい。

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