さらに、築地関係者の受難は続く。「冷蔵庫などの設備をリース契約している場合、契約の内容によっては、移転延期となった今、違約金が発生しています。また、店舗のロフト(屋根裏)までの高さが高く、新たに80万円を投資して設備を補強した業者もいます。それらの補償をどうするかという問題も、宙ぶらりんのままですね」(前同)

 シワ寄せはすべて、現場で働く人へ。こうした個々の“闇”は幾重にも折り重なり、築地関係者には“廃業”を選ぶ人も少なくない。おまけに、ここにきて、「手抜き工事ではないか」との疑惑も急浮上。笑えない話があるのだ。

 市民オンブズマン関係者が打ち明ける。「去年、豊洲新市場の青果棟で、鉄骨が36メートルにわたり崩落する大規模な事故がありました。都は一時、重機の操作ミスだったと説明をしたようですが、鉄骨をつなぐボルトの数が不足していたという噂もあります」 まさに、豊洲新市場が“欠陥商品”そのもの。

「これらの欠陥を隠蔽したいからでしょうか。築地の業者は、全体の10%程度しか、新市場の中を見せてもらえていないように思います」(前同) いい加減極まりない“お役所仕事”に、ソッポを向きだす業者も多数、現れ始めているという。

「先日、築地市場内の業界紙に“船橋市場(千葉県)”へ来ないかとの広告が掲載されていました。それだけ豊洲新市場に魅力がない証拠です。豊洲に入るより、船橋のほうがいいんじゃないか、と」(中澤氏)

 そして、石原元都知事の“取らぬ狸の皮算用”も、「都では6000億円近い新市場の建設資金を賄うため、築地市場の売却代金をかなり巨額に見込んでいます。ところが、築地は高く売れても3500億円。実際、築地が売却されるのは、東京五輪後という話なので、“五輪バブル”崩壊によって、売却代金はより目減りするでしょう」(前同)と、何ひとつうまく行かない豊洲新市場への移設なのだ。

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