江本氏は続ける。「阪神でなくとも今のコーチは、あまり選手をいじりたがらない。下手にいじって失敗したら、自分の責任になってしまうからね」 ならば、どうすれば……。「なんとか自分で工夫するしかないでしょうね。ケチなプライドを捨てて、いろいろな先輩のアドバイスを聞くようにすればいいと思います」(江本氏)

 7月8日の広島戦。5失点の藤浪の打席に金本監督はあえて代打を送らず「懲罰采配」。このとき、藤浪は161球を投げ、疲労困憊。「同じミスを繰り返す藤浪に、自覚を持ってもらうため、あえてしたことでしょう」(スポーツ紙デスク) 藤浪は今、野球人生最大のピンチに立っている。

 一方の大谷だが、「打者との二刀流ということもあって、うまく気分を転換して壁を乗り越えようとしている」(江本氏)という。「藤浪とは違って、大谷は理想的なフォームで投げています。技術的には、文句をつけるポイントがありません」(前同)

 必ずしもスピードボールを投げればいいというものではないが、9月21日のソフトバンク戦でも1回から163キロを投げるなど絶好調。190センチを超える恵まれた体格という点では、藤浪と同じなのだが、肩の可動域が広く、しなるような投球ができるため、無理なくスピードボールを投げることができている。

 ただ、投球で重要なのは球速よりコントロール。それを再認識させてくれたのが、メジャー自己最多の14勝を挙げた田中将大(ヤンキース)だ。大リーグ研究家の福島良一氏が解説する。「田中はもともとコントロールのいい投手でしたが、肘の手術後は、あえてスピードよりも制球に比重を置くようになりました。今年の初球ストライクの確率は実に65%で、全投球の67%がストライク。この制球の良さが安定した成績を生む原動力になっています」

 抜群のコントロールと、ここぞのときのストレートの威力、そして多彩な変化球。これが好投手の必要条件。田中は、この3つを理想的な形で兼ね備えている。その田中は、甲子園では斎藤佑樹(日本ハム)と死闘を繰り広げ、ライバルと称されて「ハンカチ世代」ブームを巻き起こした。だが、斎藤は甲子園では田中を下したが、今では1軍で投げることがニュースになるほど。

 その関係はどこか大谷と藤浪を彷彿させる。ただ、大谷も藤浪も今年が高卒4年目。大学4年生の年齢にあたり、同学年が今秋のドラフト対象。それを思えば、図抜けた才能があり、伸びしろがあるのは確か。お互いが成長に必要な好敵手でもある2人が、どこまでの高みに到達するか楽しみだ。

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