来年のクラシックに向け、みんなの熱い期待を背負った有力馬たちが、次々にデビューしています。一生に一度しかないデビュー戦……クビ差で涙をのんだエアウィンザーも、その一頭です。

 父キングカメハメハ、母エアメサイア、全兄エアスピネル。血統的な背景を考えると、単勝オッズ1.3倍の圧倒的な1番人気も当然ですが、それだけで勝負が決まるほど、競馬は単純なものではありません。

「とにかく無事にレースを終えて帰ってきてほしい」 どの馬主さんも、我が子がデビューするときにはまず、こう思うそうです。もちろん、その後に、「できれば勝ってほしい」という言葉が続くのでしょうが。

 僕ら騎手にとっても、勝たせてあげたいのは、どの馬も一緒です。でも、2歳馬に乗るときに、まず心がけているのはレースが怖いもの、嫌なものだと思わせないことです。

 臆病な馬。気性が勝っている馬。騎手の指示に素直に従う馬……。100頭いれば、100頭すべて性格も能力も違いますが、走りたいというのは、すべてに共通した馬の本能です。それを、どうやったらうまく引き出してあげられるのか!? 競馬は奥が深すぎて、乗れば乗るほど分からなくなりますが(苦笑)、その答えを求めていくのが僕ら騎手の務めだと思っています。

 エアウィンザーに関して言うと、全体的に身体が緩く、まだ本気で走っていないという感じです。ただ、1分47秒8という時計は、阪神芝1800メートルの新馬戦では史上初の好タイム。まだまだ良くなるし、良くなってもらわなければ困る馬です。

  1. 1
  2. 2