名越「だから大反対されるんです。どうやって売る気だ、と。しかも、当時は子ども向けのゲームが大半で、“子どもにウケる”ことが最も重要だったんです」
ゆま「なのに、名越さんは子どもも世界も無視(笑)。周りを、どう説得したんですか?」
名越「まあ、そうはいっても良い作品を作って日本でバカ売れすれば、製作費などが回収できないわけでもない。要は本当に面白い作品なら、日本国内のみでも勝負はできる、と」
ゆま「思えば、私の周りにも、普段ゲームはしないけど『龍が如く』だけはやっている人が多いんですよ」
名越「そう、そのタイプがメチャクチャ多いんです。ありがたいことです」
ゆま「そして、今や『龍が如く』はシリーズ化されるだけでなく、映画や舞台にもなっていますもんね」
名越「正直、そこまでは想像していなかったです」
ゆま「失敗したときのことは考えていました?」
名越「それはもう、先にも話した通り、『龍が如く』を作るのにン億円かかっていますから、失敗したら当然、タダでは済まない(笑)。ちなみに当時、僕はすでに経営者で、会社とは1年契約でした。だから失敗すれば、“会社に損失を出した”ということで、クビを切られていたと思います」
ゆま「クビ覚悟って、怖くなかったですか?」
名越「……口では“失敗したら責任は取るので好きにしてください”と言っていましたが、実はけっこう怖かったですね(笑)」
ゆま「ですよね~。発売した後も怖かったですか?」
名越「不安でしたね。というのも最初からドーンと売れたわけではなく、徐々に徐々に売れていったんですよね。『龍が如く』は口コミで広がった作品なんです」
ゆま「当初はクラブにブースを置いて“手売り”もされていたと聞きました」
名越「はい。本当に周りのスタッフも必死でやってくれていましたね。今から思えば、一緒に頑張ってきたスタッフも“ヒットするぞ!”という気持ちはあったけど、不安で、不安で仕方なかったんでしょうね」
ゆま「大ヒットの裏には作る人たちの覚悟や苦労があるんですね。ところで一ゲームユーザーとして聞きたいんですが、どうしてゲームって発売延期が多いんですか!? 楽しみにしていたのに! ってなります」
名越「あ~、そこを聞いちゃいますか……(笑)」
(次週につづく)
名越稔洋 なごし・としひろ
1965年、山口県生まれ。株式会社セガゲームス取締役兼開発統括本部統括本部長並びに株式会社セガ・インタラクティブ取締役CCO兼開発生産統括本部統括本部長。大ヒットアーケードゲーム『デイトナUSA』や『龍が如く』シリーズを生み出したトップクリエイター。
麻美ゆま あさみ・ゆま
1987年生まれ、群馬県出身。 2005年デビューし、ブレイクを果たす。セクシーユニット『恵比寿マスカッツ』のメンバーとしても活躍。現在はタレントとして活動。最新CD『Re Start~明日へ~』が発売中。
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