広島の球団幹部は毎年のように、黒田に「帰ってきてくれ」と伝えていたが、黒田は「ありがとうございます」というのみだった。「しかし、その年は球団幹部が恒例のように“帰ってきてくれ”というと、“お願いします”との返事が返ってきたとか」(前同)

 ただ、黒田に対するメジャーの評価は高く、パドレスなどから年俸20億円を提示されていた。「そのため、いくら払えばよいのか悩んだ広島球団が恐る恐る提示した金額が4億円。それを黒田は二つ返事でOKしたんです」(同)

 このオファーを、なぜ受けたのか。「日本に帰るなら最後は広島で」という強い思いに加えて、もう一つ黒田の心を後押ししたものがあったという。「14年10月、その年の夏に広島を襲った集中豪雨の被災地を、黒田はボランティアで訪れています。そこで見た光景が、今こそ広島に恩返しをすべき時なのではと、彼の気持ちを後押ししたんだと思います」(同)というように、黒田の男気エピソードを書き始めれば、枚挙にいとまがない。しかし、その裏には、黒田の“人間臭い素顔”も隠されていた。

 マウンド上では、様々な決断を瞬時に下す黒田だが、プライベートでは、優柔不断だというのだ。「“一度焼肉と決めても、歩いているうちに、中華のほうがよかったかなと思い、中華料理店に入る”なんて話をテレビ番組でしていましたね(笑)」(広島番記者)

 熱狂的なカープファンとして知られる、お笑いコンビ『ザ・ギース』の尾関高文氏は、黒田の素顔をこう語ってくれた。「黒田さんは、実は大のお笑い好きなんです。まだ売れていない芸人の名前も、よく知っています。僕のような人間にも偉ぶることなく接してくれる、素晴らしい人ですよ」

 そのお笑い好きが高じてなのか、チーム内でも周囲を笑わせるイタズラをたびたび仕掛けているという。「一番有名なのは、新井貴浩選手の用具カバンに、消火器を入れたイタズラ。新井選手は気がつかずに、そのまま家に持って帰ってしまったそうですよ」(前同)

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