ちなみに、このイタズラが決行された日は、新井がタイムリーエラーをしてしまった日だったという。黒田なりの励ましのメッセージだったのかもしれない。「他にも、現三軍コーチの菊地原毅さんは、バッグに鉄アレイを入れられたとか。自身の200勝がかかった今年の巨人戦では、緊張するチームのムードを変えようと、黒田は“あいつは最近、ビタミンが足りていない”と、野村祐輔投手のスパイクにみかんを仕込んだそうです」(前出の番記者)

 また、マウンド上では、気持ちを全面に出した闘志あふれるピッチングをしてきた黒田だが、実はとても繊細な一面があるという。「広島に復帰した当初、“今年勝てなかったらどうしよう”と身内に不安を漏らしていたとか。0勝に終わった今年の5月にも“もう1勝もできないかも”と弱気になっていたそうです。しかし、彼はそんな不安を外部の人間には一切感じさせませんでした。一度、背負った“男気”という看板を最後まで下ろすことはなかった。そこに一番、男気を感じますよ」(前同)

 体もボロボロだった。メジャー時代、打球が右側頭部を直撃。以来、首から右肩にかけて残る後遺症の痛みと闘い続けてきたという。「CSファイナルステージの登板3日前には、キャッチボールの際に肩が上がらなくなり、登板回避も検討されたほど満身創痍の状態だったんです」(同)

 それでもファンの期待に応えようと、マウンドに上がり続けた黒田。日本シリーズで記録した驚異的な視聴率も、むべなるかな。前出の尾関氏は黒田に、こんなメッセージを送る。「辞めないでくれというよりは、よく、ここまでやってくれたという感謝の気持ちのほうが大きいです。本当に、ありがとうございましたと言いたいですね」

 野球評論家の里崎智也氏は、黒田の引き際の見事さを、こう絶賛する。「どのチームにも黒田さんのような“伝説”と呼ばれる選手はいますが、チームを優勝させて、有終の美を飾るという幸せな終わり方ができる選手は滅多にいません。黒田さんの辞め方は理想的ですよ」

 耐雪梅花麗。黒田の座右の銘であるこの言葉は、雪に耐えて咲くからこそ梅の花は美しいという意味。まさにその言葉通り、様々な苦難を乗り越えながらの野球人生だっただろう。広島を愛し、広島から愛された男。彼の19年にわたる野球人としての軌跡が、永遠に語り継がれていくことは間違いない。

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