騎手になって30年。挑戦できるだけでも贅沢な日米のブリーダーズカップを2つとも、この手にできたら……これは、ちょっとすごいことですよね。

 表彰台に上がる自分を想像しながら挑んだビッグレースの着順は、明と暗に別れました。まずは11月3日に川崎競馬場で行われた交流G1「JBCクラシック」から振り返りましょう。僕のパートナーは、6歳にしてG1初挑戦となるアウォーディー。なんとか勝たせてあげたいとの思いはあっても、相手はすでにG1の勲章をいくつも持っている最強の馬たちです。

――どうやったら彼らに勝てるのか?

 アウォーディーの走りとライバルたちの位置取り。ペースや展開を頭の中に何度も、何度も、何度も思い描き、勝つにはこれしかないと決めたのが、ライバルたちの直後……外目の好位を追走することでした。

 不安材料は二つ。最後の直線を向くまで強豪馬たちに離されず、しかも余力を残して追走できるか。もう一つは、どこでGOサインを出すかです。これは性格的なものだと思いますが、アウォーディーは、なかなか先頭に立ちたがらない馬で、そのタイミングは早すぎても遅くてもだめ。我慢に我慢を重ねて、もうすぐ、そこがゴールというギリギリのところで差し切るというのが勝利への方程式でした。

 思いが通じたのかどうかは、馬に訊かないと分かりませんが(笑)、内容も結果も120%。こんなに気持ちのいいレースは、ほんと、騎手冥利に尽きます。

――この勢いで、アメリカのブリーダーズカップも。

 レース後、そのままアメリカに飛んで、ヌーヴォレコルトとともに、サンタアニタパークで開催されるブリーダーズカップの「フィリーズ&メアターフ」に挑戦しました。

  1. 1
  2. 2