それで、ぼくを附け打ちに誘ってくれた先輩や仲間のグループ4人で、平成15年に、「附け打ちの専門職」を復活させたんです。何もできない人間が偉そうなことを言ってもダメなので、修業を重ねて……。初めて附けを打ってから、10年以上かかりました。今では、劇場付き大道具方と、我々専門職の2通りの附け打ちがいます。

 附け打ちの魅力は、自分の台本がもらえて、稽古場に行って出演者の方たちと仲良くなるのも楽しいんですが、なんといっても、芝居の中で役者さんと一対一でやれるところ。主役が幕外で一人になると、舞台はもうその役者の演技と附けの音だけになるんです。それが一番のやりがいですね。

 現在の悩みは、人手が足りないことです。今、附け打ちは、日本全国で9人しかいないんです。そのせいで、ひとつの公演に2人で行くっていうのが叶わないですよ。お囃子さんなんかだと、2クルーでやれるんですが、我々は手が痛くても具合が悪くても、絶対に休めない。

 だから今、新しい人材を募集しています。歌舞伎が好きな23歳の以下の男性で、打たれ強いという人がご家族やお知り合いにいたら、ぜひともご応募くださるようお伝えください。いえ、やる気がある人なら、23歳以下じゃなくてもいいです(笑)。お待ちしてます。

撮影/弦巻 勝

山崎徹 やまさき・とおる
1969年2月28日、岡山県倉敷市出身。舞台の大道具方のかたわら、「附け打ち」を始め、1992年に『新春浅草歌舞伎』で初舞台。その後、実践を重ね、2003年に仲間4人と附け打ちとして独立。この10月には、新橋演舞場で片岡愛之助と『GOEMON』、11月は中村勘九郎&七之助兄弟と『錦秋特別公演』で全国14か所を巡業、12月は京都・先斗町歌舞練場で『吉例顔見世興行』、年が明けて1月からは、大阪松竹座にて『中村芝翫襲名披露』と、休む間もなく附けを打っている。

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