「そうなると、日本との貿易に頼らざるをえません。韓国にもこうした見通しがあるため、過去13回、経済協議を行ってきました。ところが、今回の一件でこれが延期となり、今後、頼みの綱である日本との貿易も縮小すれば、韓国経済は命運を絶たれることになります」(同)

 そこに追い打ちをかけそうなのが、日韓通貨スワップ協議の中断だ。日韓通貨スワップとは、日本と韓国いずれかの国の通貨に危機が生じた際、両国の中央銀行である日本銀行と韓国銀行が外貨を融通・交換するという取り決めだ。

「ただ、強い“円”が通貨危機に陥る可能性はなく、事実上は韓国のための救済措置なんです。1997年に外貨不足から“ウォン”が通貨危機に陥った際も、陰で日本が韓国を助けましたからね。その後は、輸出が好調で外貨準備高が増えたため、“もう必要ない”と韓国側から申し出があり、いったんスワップ協定は終了していたんです」(同)

 しかし、15年10月の日韓財界会議で、韓国全国経済人連合会(全経連)の許昌秀会長が日韓スワップの再開を求め、再開に向けた協議がスタートした。「経済の低迷などで、再び“ウォン暴落”の懸念が浮上してきたからです。自分勝手にもほどがありますが、韓国は、まさか日本が通貨スワップ協議を中断する措置に出るとは思ってもいなかったでしょうね」(前出の自民党関係者)

 自らの首を絞める形になった韓国だが、朝鮮半島情勢に詳しい軍事ジャーナリストの井上和彦氏は、「すべての元凶は、“反日無罪”という韓国の歪んだ体質にある」と指摘する。

 反日無罪とは、“反日”を声高に叫ぶことこそが“正義”であり、“反日”は何事にも優先され、その行為に罪はないという考え方だ。

「民主党政権時代に韓国の李明博政権との間で、日韓で軍事秘密情報を提供し合うGSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)が成立する運びとなったんですが、その直前、まるでチャブ台返しのように、白紙撤回されたんです。反日世論の影響でした」(前同)

 ここにきてICBM(大陸間弾道ミサイル)の保有を宣言した北朝鮮の軍事的脅威に絶えずさらされる韓国だけに、日韓で軍事情報を共有するのは有意義なはずだが、反日アレルギーが邪魔をして、冷静な判断ができないというわけだ。GSOMIAは昨年11月にようやく調印にこぎつけたものの、「今後、有意義に進むかは甚だ疑問」(防衛省関係者)だという。

 国家間の取り決めを一方的に破っても、経済が危機に瀕しようとも、安全保障上のリスクが生じようとも、韓国は“反日モード”に入ると理性を失ってしまう。また、今回の慰安婦像設置の一件は、国家機密漏洩問題で朴槿恵政権が“機能不全”に陥っていることも大きく影響しているという。背後に、北朝鮮の影がちらついているからだ。

「日韓合意後、新たに慰安婦像を設置したといわれる団体のすべてが、そうとは言いませんが、少なくとも、釜山の領事館前に像を設置した民間団体は左翼グループとみられています。この団体の狙いは、北の核兵器を容認し、北へ経済援助する政権を作ることです」(室谷氏)

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