つらい稽古をひたすら続け、強靭な下半身を作り上げた“根性”も、また横綱級なのだ。「春場所の強行出場がのちに影響するなんていわれますが、私はそうは思いません。常に全力で挑み、相撲に対して真摯に取り組む彼だからこそ、今回のケガも間違いなく、しっかり治してくると思います」(同)

 稀勢の里の根性を舐めるな、といったところだ。ただ、一つ心配なのは、スピード型の力士に弱い点。「ケガをした後の一番もそうでしたが、相手のスピードに対応しきれていないところがあるんです」(同)

 相撲評論家の三宅充氏も、この点については、「稀勢の里は足が長い分、腰を落とすのがやや遅い気がします。そこをつけ込まれると、またケガをする危険があるので、早く克服してもらいたいですね」と心配するが、今回のケガについては問題なしと、こう付け加える。

「稽古熱心で、とにかく真面目。すでに年齢も30歳になりましたが、努力家の彼はすぐに自分の弱点は直してくるでしょう。今回のケガも上半身でよかった。相撲は下半身が重要なので、貴乃花のように膝をケガすると厄介なんです。稀勢の里は貴乃花の二の舞にはなりませんよ」

 春巡業の休場は残念だが、ここでしっかりケガを完治させれば、夏場所では、また横綱相撲を見せてもらえそうなのだ。前出の大野氏もこう言う。

「モンゴル勢の横綱も最近は年齢とともに力が衰えてきています。それと同時に、高安をはじめ、正代、御嶽海といった若手の成長は著しく、次世代の横綱候補。稀勢の里には彼らの壁になってもらいたいですね。そうなることで、さらに強い日本人力士が誕生する。彼の横綱としての役目は、まだまだ始まったばかりですよ」

 痛みに耐えて、よく頑張った稀勢の里だからこそ、やってくれるに違いない。

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