天候に恵まれたからか、GW(ゴールデンウィーク)中に開催された今年のG13連戦、天皇賞・春、かしわ記念、NHKマイルCが行われた、京都競馬場、船橋競馬場、東京競馬場のスタンドは、どこも熱気にあふれていました。ひと目、オグリキャップを見ようとファンが殺到した第二次競馬ブームの頃に比べると、“まだまだ、こんなものじゃない”とも思いますが、ここ数年、着実に競馬人気が高まるのを肌で感じます。もっとも、負けていたら、それどころじゃなかったと思いますが(笑)。

 最初のG1、天皇賞・春から振り返りましょう。昨年の有馬記念で敗れたサトノダイヤモンドにリベンジしたいという気持ちがなかったといったら嘘になります。でも、しかし、敵は自分自身。誰が、どんな戦法で挑んできても、限界ぎりぎりまで馬の能力を引き出せれば、絶対に負けない――今のキタサンブラックには、それだけの力があると信じての騎乗でした。

 勝負のポイントは、どこで仕掛けるか、その一点です。思っていたより速いペースでレースが流れる中、先頭に立ったのは2周目の4コーナー手前でした。キタサンブラックじゃなかったら、あそこで仕掛けることはなかったと思います。キタサンブラックなら最後まで耐えてくれるはず。その先を見据えたときに、ここで耐えてこそ本物……一瞬の間に、いろんな思いが交錯していました。

 結果は、僕自身も、“絶対に破れないだろうな”と思っていた、あのディープインパクトが持つタイムを0秒9も更新する驚愕のレコードタイム。人馬ともに、最後の一滴までガソリンを使い果たしての勝利でした。

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