仲間になっちゃうからこそ、おもしろい話が沢山聴ける。それを元に書けるんです。ただ、僕は酒場ライターではないので、書くために飲みにいくっていうのはしたくないんですよね。酒場で飲むっていうのは、僕にとっては生活の一部。詩人として、そのなかで湧き出てきたものを書いていきたいですね。

 まあ結局、どんなシリアスな本を書いていても、どういうわけか、必ず最後は居酒屋に行かされちゃいます。だから、なかなかお酒を抜く日はないですね。たまの休肝日は、ビールの中ジョッキを3杯まで(笑)。でも、どれだけ飲んでも翌朝は4時半に必ず起きて原稿を書きます。

 僕の座右の銘は、“汝、悟るなかれ”。悟ったら、完成しちゃうわけじゃないですか。完成したら、前に進めない。僕は興味を抱く対象が山のようにあるから、年をとる暇がないです。

 今回の映画『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』で初めて映画の仕事をさせてもらったんですが、楽しかったですね。初めは案内人役としての話だったんで、それなら素面の時間が短いぼくでも大丈夫かなって思って、受けたんですが、映画にどんどん引き込まれて、結局、役者として出演しちゃいました(笑)。

 映画っておもしろいなと思ったので、今度は自分で作りたいなと。そうやって、いくつになっても新しいことに手を出していきたいですね。いつ、バタッていくかもわからないし、守りに入ったら、人生はおもしろくないですよ。

撮影/弦巻 勝

吉田類 よしだ・るい
1949年生まれ。20代半ばに渡欧し、画家としてパリを拠点に活動。30代で帰国し、イラストレーターに。90年代から酒場を巡る人間模様や旅をテーマに執筆を続ける。03年から始まった『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)は現在に至るまで人気を博している。俳句愛好会『舟』を主宰。

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