やっぱり、自分が一番、情熱的でいられるのは、いつだろうって考えると、旅先のストリートで出会った人たちと一緒に、何かを表現するっていうときなんですよ。それを上から描くんじゃなくて、中にできるだけ入って、そこから外に向けて、表現していきたい。ヘビーな状況にいる子どもたちには、社会に対して訴えかける術を持っていない。僕は、映像っていう手段を持っているから、そこに出かけていって、彼らの言いたくても言えないことを世に出していきたいんです。

 シリアの女の子の叫びなんて、テレビで見てもわからないじゃないですか。やっぱり、俺らは爆弾を落とされていないし、手を失ったとか、そういう痛みはわからない。でもそれを、イマジネーションすることが重要だと思うんです。

 まあ、こんな偉そうなこと言っていますけど、僕自身が、イマジネーションできていないから、今回のような映画を作ったんだと思います。映画で表現したことを自分の日常生活の中に、表現されているかっていうと、そうでもない。自分ももがいているんですよ。

 次の自分の映画が、どこに行くかわからないですけど、自分が楽しむために作るし、自分が足りていない部分や、求めている部分に正直に作っていきたいですね。

撮影/弦巻 勝

長谷井宏紀 はせい・こうき
1975年岡山県生まれ。セルゲイ・ボドロフ監督『モンゴル』(ドイツ・カザフスタン・ロシア・モンゴル合作・米アカデミー外国語映画賞ノミネート作品)では映画スチールを担当。09年にフィリピンのストレートチルドレンを描いた短編映画『GODOG』でエミール・クストリッツァ監督が主催する映画祭で「金の卵賞」を受賞。セルビアに活動の拠点を移し、海外資本の映画製作に携わる。15年に『ブランカとギター弾き』で長編映画監督デビュー。現在は東京を拠点に活動中。

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