■渡辺謙との共演がクライマックス!
これまでを振り返り、今回の佐野史郎はどうだったか考えてみると、まさに最高のキャスティングだったように思える。佐野といえば、1992年のドラマ『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)が有名だ。このときのマザコン男“冬彦さん”は、四半世紀以上が過ぎた今でも、佐野の“個性派”“実力派”というイメージを作り上げている。インテリジェンスを香らせる、彼独特の冷徹な眼差しは、今回も健在。『西郷どん』前半のラスボスとして見事に輝いていた。
加えてもう一つ、佐野史郎が井伊直弼に適任だった理由がある。実は、佐野は島津斉彬を演じた渡辺謙(58)とは旧知の仲なのだ。2014年、渡辺がハリウッド版ゴジラに出た際は、勉強不足の渡辺にゴジラオタクの佐野が説教した、なんてエピソードも残っている。井伊直弼役の佐野VS島津斉彬役の渡辺というキャスティングも、また見事だった。お互いを知り尽くしたベテラン俳優の対決が『西郷どん』前半の大きなクライマックスだったのではないだろうか。
敵役の死すら、本当に切なく感じさせてしまう。これもまた、大河ドラマの大きな魅力といってよいだろう。(半澤則吉)