謝罪のプロに聞く、大人の「正しい謝り方」の画像
謝罪のプロに聞く、大人の「正しい謝り方」の画像

 悪質タックルを巡る謝罪会見で男を上げた弟子と、日本中を敵に回した師。どこがどう違ったのか。プロに聞いた!

 お茶の間の全員がそう思っただろう。日本大学と関西学院大学のアメフト定期戦(5月6日)で、日大の選手が関学大の選手に悪質なタックルをした問題で、日大アメフト部の内田正人前監督が5月19日、記者会見をしたのだが――。「負傷した関西学院大学の選手に会いに行って謝罪し、東京に戻って来ての会見でした。監督辞任を表明したものの、内実はまったく話さず、“すべて私の責任”と言うのみに終始していました」(スポーツ紙記者)

 それを受けて5月22日、タックルをした日本大学アメフト部の宮川泰介氏(20)が顔を公表し、日本記者クラブで会見。自らの罪を告白し、「監督の指示だった」と明言したのだ。翌23日、火消しにかからんと内田前監督は会見を開き、「指示していない」と全面否定。泥沼状態となったが、世間の評価はハッキリ分かれた。

■インターネットの時代、隠し通せるものは少ない

「内田氏は“間違った謝り方”の典型。とりあえず辞任して“時間がたてば、ほとぼりが冷める”と思ったのかもしれません。しかし、嘘がバレて、多大なダメージをこうむりました」 こう語るのは、『仕事の危機を乗り切るための謝る技術――よい謝罪』(日経BP社)の著書もある竹中功氏。あの吉本興業で広報畑に勤め、35年間、謝り続けてきた“謝罪のプロ”である。

「企業、大きな組織では、組織存続のため、不祥事を隠すこともしばしば。ですが、今はインターネットの時代。どこで誰が見ていてもおかしくなく、何ごとにおいても、隠し通せるものは少ない。ネットで悪質なタックルの動画が拡散されたように、です」(前同)

 嘘、隠蔽が命取りになる。では、「正しい謝り方」はあるのか? 竹中氏によれば、
(1)なぜ、そうなったのか、経緯を時系列で整理して完全把握
(2)再発防止策をまとめる
 としたうえで、誠心誠意、謝罪すべきだという。「中でも、命や身体に関わることは再優先、より迅速に対応すべきです。交通事故、集団食中毒などもそうですが、今回の日大アメフト部の問題も、下手したら、人命に関わることですから」(同)

 ところが今回、日大側は(1)も(2)もしないまま放置。騒動が大きくなり、19日の“監督辞任”で全部をオシマイにしようとしていた。「宮川選手の会見で、おおよその経緯が明るみに出ました。それからの1~2日間で防止策を出し、改めてきちんと謝罪することは、難しいことではなかったはず。でも、日大側は、それができませんでした」(同)

 一方、『心が通じるひと言添える作法』(あさ出版)など多くの著書がある“言葉のスペシャリスト”で、実業家の臼井由妃氏は今回の日大問題を、こう見る。「日大は日本で最も学生数が多く、いわば“大企業”。影響を受ける裾野は実に広い。しかも、教育機関という立場です。それなのに、内田前監督の曖昧な謝罪ですませようとし、結果、日大全体がブラックなイメージになりました。信じ難い対応です」

■言い訳と経緯説明は別

 では、我々一般人が起こしがちな日常トラブルでの「正しい謝り方」とは? 事例ごとに見ていこう。まず、仕事編。「ある卸の企業がパイナップルの注文を取っていたが、不作で、農家から注文した数のパイナップルが来なかったとしましょう。(卸し先の)相手に謝罪に行き、絶対にしちゃダメなのは、“言い訳”。農家のせいにしないことです。ただし、言い訳と経緯説明は別。言い訳と思われないよう、経緯の説明の中で、手短に“悪天候のせいだ”という旨を盛り込みましょう」(前出の竹中氏)

 そのうえで、今後の不作を想定し、第2、第3の農家から買いつけるルートを作っておくなど、防止策を立て、その旨を相手先に伝える。単に謝るだけでは意味がないのだ。加えて、「謝罪へは、それなりの権限を持つ上司と一緒に行く。損害賠償などの話になったとき、権限のない現場社員だけで行っても“出直して来い”となるでしょう。それに、後で“言った、言わない”のトラブルになった際の証人にも、上司はなってくれます」(前同)

  1. 1
  2. 2