■WBCのピッチャー球数制限のように効果的な選択肢を

「選手の故障予防については、どの連盟も具体的な取り組みを始めています。そうした姿勢は評価すべきだと思いますが、さらに一歩前に進むには、各連盟が“人材育成主義”という共通の理念のもとで一つにまとまることが必要です。たとえば、世界中のトッププレーヤーが出場するWBC(ワールドベースボールクラシック)では、ピッチャーに厳密な球数制限が課せられています。大会終了後、すぐにレギュラーシーズンが始まるからです。しかし高校野球では、球児の将来があるにもかかわらず、投手の連投が当たり前になっています。2018年から公式試合にタイブレーク(走者を置いた状態から攻撃を始め、試合の決着をつけやすくする制度)が導入されていますが、選手たちの体調を最優先に考えれば、球数制限のように、より効果的な選択肢があったのではないでしょうか」

 若い野球選手の将来は、指導者たちが守る――。桑田氏が提言する「人材育成主義」を実践するためには、いったい、どんなことが必要なのだろうか。

「僕は社会で活躍できる人材を育成することが、今の時代に即した指導理念であると考えています。それはまず“練習の質の重視”、スポーツ医科学の成果を活用して合理的な練習方法を追求すること。次に“心の調和”。これは練習・栄養補給・睡眠、あるいは練習・勉強・遊びといったように、バランスを図ることです。そして最後は“尊重”。対戦相手や審判のみならず、チームメイトと自分自身をリスペクトすること。この3つの指導理念を根づかせたいのです。加えて、現場の指導者には、社会一般のルールやモラルを順守するとともに、若い選手たちの前でスポーツマンシップを日々、実践する姿勢が求められます。目の前の勝利と若い選手の将来については、選手が有望であるほど難しい選択を迫られます。しかし、そんなときこそ、アマチュア野球の指導者たちには、これまでの“勝利至上主義”から“人材育成主義”へと、価値判断の基準をシフトしてほしいと思っています」

桑田真澄(くわたますみ)1968年4月1日生まれ。PL学園時代は、甲子園に5回出場。1985年、ドラフト1位で巨人入団。エースとして活躍し、在籍21年で通算173勝141敗。引退後は野球解説者、野球指導者として幅広く活動中。

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