■“ちゃんばら=命”のやり取りの本当の姿を見せられたのでは
そんな中で30歳を迎え、今回の『多十郎殉愛記』に声をかけていただきました。本格的時代劇で、殺陣をはじめ初挑戦のことも多かったんですが、何よりも半世紀以上、映画に命
を懸けてこられた中島貞夫監督が、20年ぶりにメガホンを取った作品に主演させていただけたことが、大きな刺激になりました。
殺陣もひと月半、基本の練習だけをやり続けました。だから、本番30分前に殺陣の型をつけられても臨機応変に対応することができたし、結果、“ちゃんばら=命”のやり取りの本当の姿を見せられたのでは、と思っています。
京都に1か月半滞在して撮影をしましたが、京都太秦撮影所のスタッフの方々の時代劇にかけるプライド、仕事への想いに感動しましたし、京都の街への愛着も湧いて撮影後は“多十郎ロス”になったほどでした。
今回の現場では自分の中で、さっき話した“勢い”をコントロールしながらやらなきゃ……と考えて、準備して臨んだんですが、やっぱり出来上がったものを見て「もっと出来た
だろう」という思いがあります。「こうあるべきだ」という願望はあるものの、いきなり完璧にはできなかった、ということですよね。
それは反省とか後悔というのではもちろんないですが、でも、そう思えたのは、とてもありがたいことだなと思いますね。正直、悔しい気持ちがありましたけど(笑)。
いま31歳ですが、これからはひとつひとつを丁寧にこなしていきたいと思っています。20代までは本当に何をやってもいい。それで許される世の中であるべきで、知らないことが武器だと思っているんです。
でも、これから30代後半、40代になったときのことを考えたら、やっぱりいろいろなことを知っていたほうがいいのでは、と思うんです。
今まではいろんなことに挑戦させてもらえる環境にあって、実際にいろんなことをやらせてもらったけど、“これは大切だな”と思えることって、実はそんなに多くないことに気づきました。大切だと思えることを丁寧にこなしていけば、結果はついてくるものもたくさんあると思うんです。ただ、それをやることは難しいんだろうなと思うし、30代で完璧にできるとは思っていませんけどね(笑)。
高良健吾(こうら・けんご)
1987年11月12日、熊本県生まれ。2005年、ドラマ『ごくせん第2シリーズ』で俳優デビュー。2006年に公開された『ハリヨの夏』で映画デビュー。2011年、『時計じかけのオレンジ』で舞台初挑戦。2013年に公開された主演映画『横道世之介』で第56回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞。主な映画出演作に『シン・ゴジラ』、『月と雷』、『彼女の人生は間違いじゃない』、『万引き家族』、『止められるか、俺たちを』など。公開待機作に『アンダー・ユア・ベッド』、『葬式の名人』、『カツベン!』がある。また、『花燃ゆ』、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』などのドラマにも多数出演している。
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