■緒形拳や高倉健はすごかった
井筒 しげるさんは、今まで共演した役者で印象に残っている方っています?
泉谷 うーん、いろんな方がいるけど、たとえば緒形拳さんは、スゴイ人だったよね。共演したときに驚いたんだけど、あの人は、殴るシーンがあると、演技じゃなくて本当にブン殴ってくるんだ。小便もホンモノ。
井筒 お、『野獣刑事』だ、大阪ロケ。工藤栄一監督の。
泉谷 そうそう。
井筒 緒形さんはそこまでするのは、しげるさんのことを好きなんだからって思いますよ。
泉谷 そういえば、共演はなかったけど、お会いした中では、高倉健さんは、本当に人間ができた人だった。共演者やスタッフも大事にしてたね。現場でポンとロレックスの腕時計を配ったりするんだよ。
井筒 撮影部も、もらったって聞いたな。健さんも、まさに昭和の荒野に立った不器用者か。本当の銀幕スターか。健さんの『昭和残俠伝』観て、お客が映画館出ると肩で風切って歩いてるほどの影響力がある人だったからねえ。
泉谷 まあ、同じ任侠スターの鶴田浩二さんなんかは、エラいケチだったっていうけどな。
井筒 ウハハ。そんなセリフ言ってた。“俺は只のケチな人殺しだ”って(笑)。
泉谷 そういえば、東映の任侠映画が人気があるのは“敗北者”や“はみ出し人間”が描かれて、そこにダメ人間が共感できて入り込むからな。
井筒 そういう意味では、現在は“敗北者”や“ダメ人間”がすごく生きにくい世の中になってる。